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ドラゴンクエスト5 天空の花嫁
【二次創作 官能小説】

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ラインハット編 その二 奴隷王子-1

ラインハット編 その二 奴隷王子

 岩を掘り出し、運び、削り、また運ぶ。
 重ねて、組み込み、整える。
 その繰り返し。
 日が昇るより先に始まり、月が傾く頃にようやく終る。
 夏の日差しに肌が焦げ、冬の寒さに心が凍る。
 降り注ぐ鞭に従い、乾きを潤す水に群がる。
 絶壁の孤島。四方は海に囲まれ、大鷲の姿は餌を求めて今日も舞う。
 光の神殿、総本山建築現場はこの世の地獄であった。

 毎日をやり過ごす奉仕者達。その目に生気は無く、空ろに、半開きの口と猫背な姿勢でふらふらとさまよう。
 何時終るかもわからない作業と、理不尽な暴力。
 男なら鞭に打たれ、女なら器量次第で……。
 彼らの希望は唯一つ。この辛酸の果てにある開放で、他にはない。
 そう、無いはずだった。

 神殿建設現場、頂上付近にて、緑の髪の奉仕者が一人居た。
 彼は周囲を気にしながら右手を筒のようにして左手で印を組む。
「……深遠を覗くものもまた、覗かれるものなり……レミリア……」
 光の精霊が彼の右手の輪の中に集まり、一瞬陽炎のような揺らめきを見せる。
 レミリアは集光魔法の派生で光の屈折を変える魔法だ。筒の中に集めることで魔法によるレンズを作り、簡単な望遠鏡を作ることができる。
「……ふむ……」
 神殿の外の世界、広大な海原を見つめるのは時と場合によっては爽快な気分にさせてくれるが、虜囚にある彼にとっては絶望に他ならないだろう。たとえこの牢獄を抜け出したところで、大海原という自然の防壁がそれを阻むのだ。
 それでも彼は周囲を見渡していた。
「ふむ」
 そして何かを見つける。
 大海原に木の葉一枚浮かんでいるような微かな変化。光の反射に紛れるも、魔法の精度を高めることでそれを確定する。
「……あれが連絡船……だな」
 彼がそう確信するのはわけがある。
 初めて彼が外界を見たとき、北西に灯台が見えた。それはポートセルミの灯台であり、距離感こそ曖昧なものの、世界地図でのおおよその位置を把握できた。
 そして海路。商業船の航路は昔から陸に沿うもの。航海術とそれに伴う魔法が進歩したとして、これが覆ることはないだろう。それは水棲の魔物の脅威もあるが、何時見舞われるか判らない「時化」。もう一つは、陸地が見えることでの安心感の確保。船員とて人の子なのだ。港を直線で結び、海原を横断するなど、世界地図を買ってもらったばかりの子供のする妄想にすぎない。
 ポートセルミの南東の海域を直進で横断するというのは世界一周に近い行為。それを商船クラスを下回る積載量で行うとすれば、ただの自殺だ。そうでないのであれば、当然この神殿に向かうということ。そう推理していた。
「ふむ……。前は火曜日で、今回は木曜日……。一ヶ月単位か」
 指折り数えながら頷く彼は、光の精霊を四散させる。


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