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ドラゴンクエスト5 天空の花嫁
【二次創作 官能小説】

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奴隷編 奉仕者-12

「当然だな。だが、今日はできるのだ。というか、チャンスは今日のような日ぐらいだろうな……」
「何か考えがあるの?」
「うむ。奉仕者の数は多すぎても少なすぎてもいけない。多すぎると管理ができず、少なすぎると工程に支障をきたすからな。奉仕者の数は一定量で推移する必要がある。俺はここへきて暫くの間、各閨の奉仕者の数と、減った数、それに補充される曜日を調べていた。当然、補給の日も船の都合などがあるだろうからな。そして、連絡船のくる周期を突き止めた。この前の補充から俺が倒れるまでに死んだ奉仕者は十三人。樽の減った量をみるに、そろそろ新しい奉仕者を補給する必要がある。今日はその定期船が来る日だ。まあ一日二日のずれはあるかもしれないがな……」
 自信満々に語るヘンリーにエマは感心したように頷く。それはリョカ、マリアも同じで、彼がただイタズラに作業をサボっていたわけではないとわかる。
 ヘンリーは印を組み、手で筒を作ると、「レミリア」と唱える。それは光の屈折率を変えることで簡単な望遠鏡を作る魔法だった。彼はそれを使い、連絡船や神殿のあるおおよその場所などを推測していたらしい。
 光を集める焦光魔法レミーラの派生で、誰にでも使えるらしく、リョカもまねをして鮮明になる視界に感心していた。
「へえ、口だけではないのね」
「ふふん、当然だ。さて、リョカ。俺達は今からこの水路を経て下界に出る。そうしたらまず船を見つけるのだ。教壇の連絡船は常に日の出のほうから来る。岩場づたいに東を目指す。そして、船を見つけたら強引にもぐりこむのだ」
「そこから先は無計画なのね」
 ふうとため息を着くエマ。とはいえ、リョカ達がここから出る方法は他に無い。
 早速タルを二重にすると、古びた胴衣を詰め、さらにリョカが入念に防壁魔法を施す。そして水の流れるほうへと転がしていった。
「それでは行くぞ。リョカよ、必ず無事ラインハットの地を踏むぞ。その時は俺が親分で、お前は子分だ。いいな?」
「ああ、わかった。けど、僕は父さんの……」
「うむ。お前はまずパパス殿の……その時は俺に償いをさせろ」
「償い? ヘンリー、君は……」
 誤解だと言いたかったリョカだが、強引にフタをされてしまう。
「よし、行け!」
 ヘンリーは続いてマリアをタルに詰める。
「マリア、俺がラインハットの王に戻った時は、君が隣にいてくれると嬉しい」
「ヘンリー、私は……そんな価値の無い……」
「頼むぞ……」
 何か煮え切らない彼女を強引にタルに押し込め、続いて自分もタルに篭る。そして横になり、転がりながら水路を目指していく。
「まったく、素直に私の僕になれば良いものを……」
 腕を組みつつ嘆息をつくエマ。だが、真の王者になるべく者が簡単に頭を下げるのもつまらないと、ごろごろ転がる様を見る。
 そして、じゃぶんと一つのタルが転がり落ちたのをきっかけに、三つ四つと続いていった……。

**――**

 波に揺られる不安な感覚と、ごぉーという水の流れる音。タルが急に向きを変えたと思ったら、不快な無重力に包まれる。
 せいぜい三十秒といったところのはずが、狭く黒いだけのタルの中、時間の流れが緩やかに感じられる。
 海面にぶつかったらどうなるか? 二重のタルには緩衝材の布切れとリョカの防壁魔法スカラが掛けられているが、万全とは言いがたい。
 もし、着水の衝撃でタルが砕けたら?
 その不安は、神殿の奉仕者として緩やかに死ぬことと天秤に掛けたとき、どちらに傾くかわからない。
 直近の今だけを見れば、明日に怯えて眠りに着くことのほうが楽かもしれないが……。


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