「公園の泡姫」-10
「えーっ、あの認知症の爺さんか!」
「ヒエーッ!」
それは、認知症で徘徊したあげく、自分の名前も家の場所も忘れてしまい、この公園に住み着いた老人だった。テント村の一番奥の、もとは別のホームレスがいたテントに寝泊まりするようになって、誰かが「隅の老人」と呼び始めた。公園に来てから、認知症の症状が急激に進んだらしく、最近では、自分で食事をすることも、一人で排泄することすらままならず、時折、他のホームレスたちが手を貸してやることで、なんとか生きている。
「明日香ちゃん、『隅の老人』の所に行って、何をするのかな…」
「そりゃあ、体を洗ってやるんだろう」
ホームレスたちの脳裏に、生き腐れたような老人に、なめらかな肌を重ね合わせる明日香の姿が浮かんだ。
「それは、ちょっと可哀想じゃないか…」
かつての自分のことなど棚に上げて、松吉がつぶやいた。
「ちょっと、見に行ってみないか」
「そうだな…」
「よし、行こう!」
集まった十数人のホームレスたちは、口々にそう言って、腰を上げた。
元の色がわからなくなり、触っただけでボロボロに崩れそうな老人の服を脱がせると、明日香は下の世話までしたうえで、
抱きかかえるようにして老人を椅子に座らせた。犬飼が用意した、いわゆる「スケベ椅子」である。
老人は自分が何をされているのか、まったくわかっていない様子で、ボーッと遠くを見つめたまま、されるがままになっていた。
盥に溜めたお湯にタオルを漬けようとした時、犬飼が厳しい口調で言った。
「ダメよ、今日は下洗いなし」
「えっ!」
明日香の表情が固くなった。いつから体を洗っていないのだろう。思わず見つめた老人の身体は、垢がびっしりこびりついて、もとの肌の色がわからなくなっている。衛生状態が悪いせいか、皮膚が爛れたり、膿が滲んでいるところさえあった。
「そう、最初から、あなたの身体で洗ってさしあげなさい」
妥協を許さない犬飼の前に、もはや覚悟を決めるしかなかった。
明日香は着ているものを全て脱ぎ、シートに正座して、洗面期の中で石鹸を泡立てた。
「それじゃあ、泡を塗っていきますね。失礼します…」
相変わらず無反応の老人に、やさしく声をかけながら、明日香は両手で、肋骨の浮き出た胸に丁寧に泡を塗っていく。
「左手から…」
自らも石鹸を胸につけると、老人の皺だらけの手を取って、
胸の膨らみに押し当てた。枯れ枝のような手が無意識のまま乳房を包むと、誘うようにして胸を撫でさせ、自ら膨らみを擦りつける。
老人の焦点が定まらない眼差しは、じっと明日香に向けられている。
「私のオッパイ、どうですか?」
そう言うと、明日香は中腰になり、双乳で腕を擦っていく。
白い石鹸の泡は、すぐに真っ黒な汁になって、明日香の体を汚す。明日香は石鹸を股間に塗って老人の腕を挟み、内腿と陰部で擦るようにして洗っていった。
両腕につづいて、柔らかな胸を押しつけるようにして、肉のそげた老人の背中を洗い、胸と腹を洗った。
「ああ…」
老人が掠れた声を出した。相変わらず意識は霧の彼方にあるようだが、その顔には気持ちよさそうな表情が浮かんでいる。
やっと、石鹸が黒くならなくなったのを見て、明日香は老人の前に正座した。手順ではこの後、即尺でペニスを口に含む。
老人の陰茎は特に反応を見せていなかった。性的興奮を覚えるためには、それを知覚することが必要なのだろう。
「オチ×チ×、お口できれいにしますね」
そう言って、顔を近づけたものの、明日香は思わず怯んだ。
長期間、入浴もせず、排泄物を垂れ流していたらしい老人の肉塊から、アンモニア臭が漂っている。
不潔感が先立ち、顔を近づけただけで、強烈な臭いに嘔吐感すら湧いてくるのだ。