猫じゃらし-4
「おっ、なかなか強いな。たがお前の思い通りにはさせな・・・!」
だが、翔の力に任せたパンチは猫じゃらしを叩き落としてしまった。
な、なんて強さだ、この猫。いちも寝てばかりのくせして、こんなに強かったとは。
「やるな・・・翔、さすが先輩を惹き付けるだけの事はある。魅力も力も兼ね備えた猫だ」
「・・・・・・・・・」
翔は、最初は俺を見つめていたが、急にその場に丸まってしまった。
さっきとは違い頭のてっぺんをくっつけて深く眠ろうとする様な体勢だった。
「お前、むきになったのが恥ずかしいんだろ」
「・・・・・・ニャ」
ほっとけ、とでも言いたげに小さく呟いた。
「じゃあまた明日な」
翔は鳴かず、代わりに長い尻尾をゆらりとなびかせていた。
俺は猫じゃらしになろう。
振り向いてもらえる男じゃなく、先輩にとっての猫じゃらしに。
空は暗くなり、間もなく翔の黒い体は闇に溶け込もうとしていた。
〜〜おしまい〜〜