猫じゃらし-2
「ぐあ〜〜重い!ガラ(石)だらけなんて聞いてねえぞ!」
「黒瀬、静かに働け。口より手を動かしな」
「は、はい!」
土と石では重さと辛さが雲泥の差だ。普通よりも遥かに早く限界が来てしまう。
何年もやってるから流石にすぐばてたりはしないが、間違いなく楽じゃない。
だけどここが男の見せ所。
先輩は口で自分を大きく見せる奴より、行動で示す男が好きなんだ。
このスコップは穴を掘るためのものじゃない、俺にとっては特別な人を振り向かせるための証なんだ−
「つ・・・疲れる・・・」
駄目だ、足が笑っている。
先輩はどうしてあんなに機敏に動けるんだ。俺より体重が軽いからか?
負けてられないと歯を食い縛って、スコップを振るう。
筋肉はもう十分なんだ、こんな作業くらい物の数じゃない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
張り切りすぎてフラフラになりながら車に乗り込み、営業所に戻る。
ちきしょう・・・今日もいいところを見せられなかった。なんか、いつも変な力が入っちまう。
いっその事、自分の想いを伝えられれば楽だろう。
でもそんなの鼻で笑われあしらわれるのが目に見えていて、その時の自分の表情を容易に想像出来る。
「先帰っていいよ」
「先輩は?」
「会いたい人がいる」
その笑顔に、俺はたまらなく悲しくなった。
先輩はそんな俺の気持ちも知らず、自販機へと向かう。
そして、その隣に置いてあるドラム缶の上に座る、意中の相手に触れた。
「・・・ウニャ」
ぐっすり眠っていたけど、眉間に触れた指に気付き、小さく鳴いた。
相変わらず幅のある奴だ。あそこに丸まってばかりらしいが、動かないからあんな体型になるんだよ。
全身真っ黒で丸くて、アフロのかつらが置いてあるのかといつも思う。
「翔、たまには運動しなよ。でないともっと丸々しちゃうかもしんないよー」
・・・また、考えてる事が一致した。
仕事中じゃなかなか意思の疎通が出来ないのに、それ以外ではわりとうまくいく。
翔は先輩に脇腹や背中を撫でてもらってるにも関わらず、まったく反応を示さない。
ちくしょう替われよ、そこに座らせろ。お前ばっかり可愛がってもらえてずるいぞ。
寝てばかりのくせに、毎日筋肉痛と戦ってる俺より良い思いをしてるのは納得いかない。
「あ、やば、こんな時間!」
暫く翔と遊んでいた先輩はこっちに戻って来た。