後輩は性奴隷……11【最終話】-9
「でも、私は気付いたんです。どうして今まで誰にも抱かれてこなかったのか。彼氏に求められても、躊躇っていたのかを」
それは、もしかして……。
「私は、お姉ちゃんの彼氏に……先輩に惹かれていたんだって」
プレイに惹かれていたと思い込んで、でも本当は、それを施す人物に魅力を感じていた……逆とはそういう意味だったのか。
「でも、おかしくない?」
俺は我慢しきれずに、矛盾点を尋ねてみる。
「だって、それに気付いたのは部室で朱音と会う前のことだろ? どうして俺が朱音の元カレってわかったんだ?」
結衣に宣戦布告されたのは、彼女が朱音と出くわす前だ。
時間軸が噛み合わない。
「……すみません」
突然そう口にした結衣は、少し川の方へ足を進めた。
「見たんです。先輩がバイトに行ってる間、押し入れの中……」
つまりさっきの謝罪は、俺がバイトしている間に家の中を引っ掻き回したことに対してのものだったのである。
押し入れの中には卒業アルバムを仕舞っていたはずだ。
アタッシュケースの直ぐそばに。
結衣はアルバムを見て確信を得たのだろう。
そしてきっと……ケースの中も……。
満足しているかという質問は、いつまでもそれらを使わなかったから……。
「……悔しかったんです」
「なにが?」
結衣の隣に歩み寄って、高い空を見上げた。
「お姉ちゃんはもういないのに、先輩の中にはまだいたことが……」
あの宣戦布告は、俺の中の朱音に対するもの。
いや、もしかしたら、朱音にこだわり続けている俺に向けられていたのかもしれないな。
「でも、ずっと先輩の中の存在だったお姉ちゃんが……昨日、突然現れたんです」
もうダメなんです、と言う声は、今にも泣き出しそうなくらいに震えていた。
「お前はもう、俺の中で随分と大きな存在になってる」
この川原で胸を締め付けられたあの日……いや、もっと前から、性奴隷以上の存在に。
「……気休めですか?」
「ううん。真里が教えてくれたんだ」
彼女が俺に、恋をする痛みや辛さを思い出させてくれたんだ。