後輩は性奴隷……11【最終話】-8
「私……帰ります」
「待てよっ」
立ち上がった結衣の手首を、俺は咄嗟に掴んでいた。
「放して!」
「いや、放さない」
少し抵抗されたものの、彼女の腕からゆっくりと力が抜けていくのがわかる。
「先輩には……先輩にだけは、知られたくなかったのにっ!」
安心しきっていたのか、掴んでいた手首がスルリと逃げてた。
でもそれは、結衣が此方に向いた反動のためであった。
漸く彼女を前から見ることが出来たものの、涙の滲んだその顔に、俺は何もできなかった。
「知ってますか?! 私がずっと、ずーっと前から、先輩に触れたかったことっ」
……知らない。
知ってるわけがない。
「知りませんよね? 私も知りませんでしたから。でも……気付いてたのに、知らないフリをしてたってわかったんです」
彼女の気持ちが、堰を切ったように口から言葉っとなって溢れて来る。
結衣……。
俺に、お前の全てを教えてくれ。
「私の初めては、自分の指でした」
それから始まった結衣の話に、俺は全てを受け止める覚悟で耳を傾ける。
「覚えてますか? 私とお姉ちゃんの部屋が、ベランダで繋がっていたこと」
当時朱音は一戸建てに住んでいて、外観は確かにそうなっていたと思うが、隣が妹の部屋だとは知らされていなかった気もする。
「私、とても気になりました……恋人同士が家で何してるのかなって。やましい意味じゃなくて、何となく」
まさか……見ていたのか?
俺たちの行為を。
「初めは覗くだけだったんです。なんだかドキドキして、やめられなくて……でもある日、お姉ちゃんが……首輪を……」
結衣は恥ずかしそうに視線を落とし、一区切りつけた。
「それからは、先輩が来ることが楽しみになりました。覗く度に、お姉ちゃんが酷い目に遭う姿を、自分に置き換えて……私……」
被虐嗜好者だと知った……。
「ここで先輩を見たとき、その時のことが蘇ってきて……我慢できなかったんです。肌を重ねるのは……初めてだったのに……」
「えっ?!」
まさか……嘘だろ?
俄には信じられない。
寧ろ、慣れを感じさせるくらいだったのに。
「その……メールとかネットでは何度かあるんですけど、実際に抱かれたのは……先輩が初めてなんです」
結衣……。
「すごく気持ちよかった。一人でやるよりも全然……憧れていた快感に、手が届いたと思っていたんです」
でも、と続ける結衣の視線は、とても低い位置に向けられていた。
ここで彼女を撮った時の、俺と同じ様に。