後輩は性奴隷……11【最終話】-7
「……じゃあ俺は幸せになったらいいってのか?!」
「そうだよ」
声を荒げる俺を、まるで母親のように抱き締める朱音。
「それでいいんだよ、悠。私は昔のことよりも、罪に苛まれてるあなたを見ている方が……辛くてたまらない……」
俺が罪に苛まれる姿は、朱音が前に向くことを躊躇わせるのだろう。
朱音にすり替えた責任を抱きつつける俺が、いつまでも前を向けないように……。 だから俺は……幸せにならないといけないのか。
朱音のためにも、あの子のためにも……。
「ただ、あの子のことを忘れないであげて……」
忘れるもんか。
そんなこと、あるわけがない。
「でね?」
そう言って、朱音は少し距離を取る。
「一緒に、あの子の名前を考えて欲しいの」
もちろん俺は、その申し出を快諾した。
明日に輝くと書いてアキラ。
それが、性別も知ることなくこの世を去った、俺と朱音の子供の名前。
明輝は俺を許してくれるだろうか。
ここ何日かは本当に大変だったけど、そのおかげで俺は沢山のことを学んだ気がする。
気付いたことも、間違っていたことも、自分のことも……。
明輝。
朱音の言葉を信じて、俺なりに罪を償っていくから……だから、しっかり見ててくれ。
そんな願いを、澄み渡る青空の向こうに込めていた。
今ならきっと、素直に向き合える気がする。
……いや、俺は結衣と、しっかり向き合いたい。
「っ……こ、講義……でないんですか……?」
俺の足音に振り返った女の子は、直ぐに顔を背けて膝を抱え直した。
「俺、方向音痴らしくてな。気付いたらここに着いてた」
低い堤防の道路沿いに並ぶ、すっかり葉っぱだけの桜の木々。
絶え間なく、穏やかにせせらぐ川の流れ。
花見のシーズンが終わったこの川原に人の姿はなく、そこにあったシルエットが結衣のものだと直ぐにわかった。
「……嘘って、わかってたんですね」
「わかったのはもっと後だけどね」
膝を抱える腕にぎゅっと力を入れる結衣。
「そうやって……期待させたんですよね」
「結衣……?」
「……っ。ごめんなさいっ。私、こんなこと言うつもりじゃっ……」
ハッとした様子で此方を向いた結衣だったが、直ぐに視線をふるふると泳がせて顔を背けた。