後輩は性奴隷……11【最終話】-4
正直、頭はとっくにショートしている。
しかしバイトは俺がいかないと真里に迷惑がかかるし、それまでシフトしているオーナーと店長にも代わりを探してもらったりと手間をかけさせてしまう。
私情で仕事を休むわけにはいかない。
そう考えついた俺は、案外自分は分別がつけられているなぁと、また客観的な視点で自己評価を下していた。
でもそれは、客観的に考えることができていると評価されるべき点ではなく、寧ろ現実逃避の入り口に立っているという批判を受ける方が正しい。
実際、この世界から逃げ出したい気持ちで一杯だ。
でもそれを選択するのは不可能。
そもそも選択肢に入れることすら躊躇われること。
……亡くなった子に示しがつかない。
「おはよーございまーす」
誰の声だ?
あぁ……俺か。
今からバイトだったな。
体に染み付いた作業を淡々とこなす。
まるで、手が勝手に動いているみたいだ。
「聞いてくださいよ〜」
客が途絶えて、俺に話し掛けてくる真里。
何だかとても明るい。
無理をしているくらいに。
「で、それがすっごく不味かった……聞いてます?」
「聞いてるよ?」
全く聞いてません。
と言うよりは、頭に入ってこない。
これ以上情報を受け入れるだけの余裕が、今の俺にはない。
「もしかして……気にしてます?」
「……正直」
はぁ、と大袈裟に溜め息をついた真里。
「悠さんって、案外責任感じる人なんですね」
案外ってなんだよ。
「私は全っ然気にしてませんよ?」
「なんで?」
「なんでって……新たな自分を発見したんですよ?! 逆に感謝です」
「……感謝?」
「そうです。自分を誤魔化した……偽りの恋だって、気付かせてもらえましたから」
だからもう気にしないで? と言いながら笑顔を浮かべる真里に、俺は少し救われた気がした。
バイト先から出ると、俺を発見した朱音が歩み寄って来た。
「誰ですか?」
「例の……」
それで理解したのか、真里は要領を得たように何度か頷いていた。
「じゃあ……お疲れ様です」
「お疲れっ」
ありがとう、真里。
お前のお陰で朱音と話せる余裕ができたよ。
本当に、ありがとう。