異界幻想ゼヴ・アファレヒト-29
「これからは色々な事態が動くだろう、との事で吾輩と意見が一致した」
「色々、ってのは?」
ティトーの質問に、ザッフェレルは頷く。
「天敵の態度から察するに、どうやらミルカ失踪中はあちらも事態は進行せず膠着状態が続いていたのではないか、という事で宰相殿と吾輩の認識が噛み合った」
「だけど、ミルカが帰ってきたから……?」
「推論が正しいなら当然、あちらも事態が動く」
フラウとティトーが、互いの意見を補完しあう。
「それ故に、昨夜は礼を言いに来たのではないかと思われる。保護措置なしで戦闘になってしまったのは、きゃつらにとって想定外……血が騒いでしまったのではないか、とな」
お互いを殺し合おうと憎み切っている間柄。
新規参入したミルカが能力を出し切れておらず、未熟なままで息の根を止めてしまえたならと夢見てオーバーワークに走ってしまった。
無理のない推論ではある。
「お待たせいたしました」
使用人がメイン料理を運んできて、二人の前に置いた。
「事態が動けば、両者は多忙を極めるであろう」
また五人になるまで待ってから、ザッフェレルは喋り出す。
「最も、敵戦力の解析が済むまで少々時間がかかる。深花、主を一人前の軍人に育て上げるだけの時間は取れるはずだ。訓練についてこれなければ致死率が飛躍的に高まる事実を鑑みれば、訓練にも身が入るだろう」
「……はい」
肝を掴まれるような冷たい感触に耐え、深花は頷いた。
「では、朝食が冷め切らないうちにいただこうか」
ザッフェレルの言葉を終わりとして朝食を平らげ、後は基地に帰る準備をする。
四人の中では、そうスケジュールが成立していた。
深花が、言葉を発するまでは。
「あの、ちょっといいですか?」
何かを秘めた決然たる表情で、深花は言う。
「聞きたい事が、一つあります」
ザッフェレルは、怪訝そうに深花を見た。
「何かな?」
一つ息を吸い込んで、深花は尋ねた。
「私の神機は、どこにあるんですか?」