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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・アファレヒト-28

「あいつらの寿命は、俺達より長いらしい。あの小娘は少なくとも、百年前から変わらない姿で目撃されている」
「百年前!?そりゃまた……」
 ジュリアスはゴブレットに水を汲み、自分の分として飲み干した。
「ティトーが二十一、フラウが二十、俺が十八で……お前はいくつだっけ?」
 もう一度汲まれた水を受け取り、深花は答える。
「十七だけど……」
「んじゃやっぱり、お前が最年少だな。あっちの男二人は、わりかし昔から目撃されてるから」
 水を飲み干してから、深花は気づいた。
「あの……」
 恐る恐る、ジュリアスに問い掛ける。
「あなたと私、一つ違いだけど……やっぱり、敬語使った方がいい?」
 ジュリアスに対する反発から、ついつい対等の物言いをしていたが……反発も消え、ジュリアスの年が分かった以上は他の二人と同じように敬語を使うべきかと思ったのだ。
 しかしジュリアスは、首を横に振った。
「今更敬語なんて気持ち悪い事言い出すな。つうかむしろ、俺はあの二人に敬語使ってるお前を見ると背中がぞわぞわして気持ち悪いんだぞ」
「でも……」
「お前の倫理感は捨てろ」
 きっぱりと、ジュリアスは言った。
「俺達は全員、成人した大人なんだ。立場の差から敬語を使うならともかく……神機間に実力差はなく、俺達はパイロットとして差別・区別される事はない。基本的に対等な関係にある四人の人間の仲において、敬語を使う方が異質なんだよ」
「……うん。努力は、する」
 素直に頷いた深花を見て、ジュリアスは微笑む。
「さて、そろそろ寝るか」
「……!」
 自分の部屋に行こうと立ち上がったジュリアスの服の裾を、深花は掴んでいた。
「あ、その……」
 どうして手を伸ばしてしまったのか、自分でも分からない。
 しかし、深花の顔を覗き込んだジュリアスは……そこに解答を見出だした。
「初陣はそんなに恐かったか」
 一人でいたくない、と顔に書かれている。
 体が溶け合って、深花がどれほど恐い思いをしたかは理解できていた。
 しかし、それが行動にどういう影響を及ぼすかまでは読み切れる訳ではない。
「分かった。一緒に寝てやるよ」
 蟠りもないし、一緒に寝る事へ抵抗はない。
「……ありがとう」
 元から半裸だったジュリアスは下着姿になると、深花の横へ滑り込む。
 腕を差し出すと、素直に頭を乗せて甘えてきた。
 どうして自分と寝るとリラックスできるのか理解できないが、それで寝やすいならそう構うべきポイントではないのだろう。
 程なくして、深花の寝息が聞こえ始めた。
 欠伸を一つして、ジュリアスもまた心地よい眠りに引きずり込まれていく……。


 翌朝。
 二人が食堂に姿を現すと、三人は既に席に着いていた。
 なかなか来ない二人に見切りをつけたようで、先に食事を始めている。
「よ。おはよう」
「遅かったわね」
「早く席に着くがいい。今日の朝食は、料理長会心の出来らしいぞ」
 三者三様の挨拶に応えつつ、二人は席に着いた。
 やって来た使用人にメイン料理の調理法を聞かれ、二人はそれぞれの好みを伝える。
 使用人が出ていってから、ザッフェレルはスープを啜って喉を潤した。
「昨夜の宰相殿との面談だが」
 敢えてジュリアスの事を気にせず、ザッフェレルは言い出す。


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