悶々ラバーズ-4
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「………うーん」
目が、覚めてしまった。
時計を見る。現在、午前5時30分。いつも目覚める時間よりもだいぶ早い。
「……どうしよう」
ぽつりとつぶやきが漏れる。向かい側のベッドでは、まだ橙藍ちゃんがすやすやと可愛い寝息を立てている。寝顔はやっぱりまだ、ちょっとあどけなさが残っている。
(恋人らしいことって……どうすればいいんだろ)
お弁当とか、作ってみた方が吾妻は喜ぶだろうか?なんだかそれはすごく彼女っぽい気がする。
でも吾妻に聞いてみたわけではないし、向こうも弁当を持ってきてたら邪魔になるだけだ。
こんなことなら、恥ずかしがらずに昨日の夜に聞いてみればよかった。
今の時間じゃまだ絶対寝てるだろうし、かといって起きてからメールして聞いてもお弁当は間に合わないだろうし……。
「……むむむむむ」
「うー…、ん……?」
「あ」
ついつい声が出てしまい、それに橙藍ちゃんが何やら反応を見せたが……幸い、またすぐに眠りに落ちた。
さすがにこんな時間に起こしてしまうのは忍びない。
起こさないように気をつけないと。
……それにしても。
(彼女らしいことって……どうすればいいんだろ)
まぁ、寝起きの頭で悶々と悩んだところで解決するはずもなく。
とりあえず顔を洗ってこよう。考えるのはそれからだ。
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――結局。
(……またえらく早く着いちまったなぁ)
現在時刻、7時前。
結局考えがまとまらず、俺はいつもより一時間近く早く学校に来てしまったのだった。
当然というかなんというか、学校に人の気配は無い。野球部が朝練くらいしてるかとも思ったが、今朝はいないようだ。
まぁ、よっぽど物好きでもない限り、わざわざ一時間以上も学校でヒマを持て余そうとなんかしないだろう。別に俺はヒマを持て余したくて来たわけじゃないけれども。
既に解放されていた校門から駐輪場へと入る。
放置されているのか、いつも駐輪場には数台の自転車が停めてある。人の気配はないが、今も5台ほど停めてあった。
(それにしても、静かだなぁ……人のいない学校は)
至極当たり前の感想ではあるが、こうまで閑散とした雰囲気に包まれた学校を見た事がなかったため、素直な驚きがある。
職員室の電気は点いていたし、先生達は既に来ている人もいるのだろう。
歩き慣れた廊下を歩く。
ただそれだけの行為も、周囲の喧騒が無いと自分の足音だけがやけに大きく響いて聞こえて、なんだか違う空間にいるような気がしてくる。