『名探偵N 〜密室殺人〜』-1
【人間は時として大きな間違いを犯すものだ。
それが命取りになることも少なくはない――名もなき名探偵】
「名探偵、また力を貸してください」
息を切らせて駆け込んできた警部に、名探偵は面倒臭そうに顔を向けた。
「今度はどうしたね、警部」
「それが、密室殺人なのですよ。被害者は一人、自室で窒息死していました」
「抜け穴や出られそうな隙間は?」
「さっぱり見当たりません。蟻の入る隙間もないとはこのことですな。
部屋の入り口はオートロックで、暗証番号は被害者一人が知っていました」
「侵入者の形跡は?」
「全くありません。被害者は一人暮らしで、身よりもなかったようです。
無論、出て行った形跡も見当たりませんでした」
「だったら簡単だ」
「はぁ?」
訝しがる警部に、欠伸交じりに名探偵は告げた。
「犯人は被害者だよ」