後輩は性奴隷……10-2
「タイミング悪ぃー」
そんな非難の声を浴びせられた。
「……は? なにが?」
「今さっき、カメラマンのバイト探してるって人が来てさ」
「へー」
「新歓の時の花見の写真を何枚か見せたんだけど、お前の写真がいたく気に入ったらしくてな」
「俺の? なんの写真?」
と訊きながら、友人の向かいに腰をかける。
彼は長机の上のファイルをペラペラやり、
「ここらへんのやつ」
と指で囲った。
「ふーん……」
さっきのこともあって、自分のショットが誉められたと聞いてもあまりテンションが上がらない。
「まぁ、どうするか知らねーけど、明日の昼休みに来るらしいから直接会って話してみたら?」
「めんどくせー」
コンビニのバイトをやっているので断る方へ気持ちは傾いている。
「名前は?」
「あっ! 聞くの忘れたっ!」
お前なぁ……。
「3回生って言ってたのは覚えてる」
「え、学生?」
「おー。その人もそこでバイトしてるらしい。カメラマンをやってる人が就活で忙しいから、卒業する前に次の代を探してるっつってた」
カメラマンをやってる人が、という言い回しから、ここに来た人はカメラマンではないのだろう。
まぁ、深く追求する必要もないか。
どうせ断るんだし。
「俺はちゃんと伝えたからな」
と念を押すと、友人はパソコンで編集作業を始めた。
俺は喫煙前と同じ様に、レポートの資料整理に追われる。
そうしているうちに、バイトの話などは頭の片隅に追いやられていった。
夕刻を回り、空が闇夜に染まり始めている。
俺はただ、やりきれない思いを持て余しながら煙草の吸い殻を着実に増やしていた。
暮れなずむ外の様子は、きっぱりと決めたはずの気持ちの揺らぎを表しているようだ。
そんな自分に苛立ちを感じているとき、不意にドアチャイムが鳴った。
「はぁ〜……」
玄関に向かいつつどうやって結衣を追い返そうかと考える。
居留守は合鍵を持っている結衣に対して良策とは言えないのだ。
「ごめん。実は……」
ドアを開けながらそこまで言って、準備していた台詞を呑み込んだ。