後輩は性奴隷……8-6
「その……ごめんなさい!」
「え?」
「急用を思い出しました!」
踵を返した彼女は、弾かれたように駆け出した。
「ちょ、おい!」
あからさまにバレバレの嘘を吐く様子から、俺には言えないことのようだ。
しかしそれは、何か知っているということを肯定することにも繋がる。
結衣……お前は何を知ってるんだ。
小さくなっていく彼女の背中に、内心で何度も問い掛けていた。
結衣のことが頭から離れない。
言葉、態度、表情……時折見せるミステリアスな結衣の姿に、泥濘(ぬかるみ)にはまって行く。
結衣は何を知ってるんだ……。
目の前の結衣に、目線で訴えた。
でも、訊けない。
訊かないことを条件に、結衣を呼び出したのだから。
この苛立ちを晴らす、捌け口として……。
時刻は夜更けの入り口辺りで、室内には耳障りなほどの静寂が溢れていた。
「訊きたいことがある」
萎縮していた結衣は躊躇いの表情を浮かべた。
話が違う、と目線が伝えてくる。
もちろん俺としても、昼間のことを繰り返すつもりはない。
直接的には、な。
「どうして欲しい?」
「え?」
結衣はどこか探るような目で、俺と視線を合わせた。
「どう責められたい?」
「……私は、ご主人様がしたいようにされたいです」
模範回答だな。
しかし、それでは結衣の持つ情報を得ることはできない。
立ち尽くしたままの彼女に、ゆっくりと歩み寄る。
頬に指先を這わせる俺を、戸惑いと僅な期待で見上げる結衣。
「そのご主人様が、どうして欲しいか訊いてやってんだろ?」
前の人のように扱われてもいい。
その台詞の中から、逆に結衣がそれを求めているという推測をしていた。
内容によっては、「前の人」が誰なのか絞り込めるかもしれない。
「私は……」
少し思案するように瞳を閉じた結衣は、恥ずかしそうに頬を赤らめた。
再び目を開け、しかしその視界には何を捕らえているかわからない。
「恥ずかしい、ことを……させられたり、その……言わされたり、あと「具体的に」
紡がれる結衣の言葉を遮り、俺は威圧的に声を低くして促した。