後輩は性奴隷……8-5
「いいお店知りません?」
「レディースはちょっとなぁ……」
とかやり取りしつつ、人の流れに紛れて歩き回る。
「あっ、あそこに入ってみましょう!」
結衣の指差す先には大きな建物がある。
「あそこ?」
ホームセンターですが……?
俺の疑念を余所に、結衣は入り口をくぐっていく。
少し遅れてその後を追った。
「先輩は、ペットに首輪はつけないんですか?」
中をキョロキョロしながら不意に結衣が尋ねてきた。
「さぁ……飼ったことないからなぁ。あ、ハムスター飼ってたけど、普通ハムスターには……あれ?」
彼女が立ち止まったので、話を区切り、振り返る。
「……結衣?」
「飼ってますよね、ペット」
普通の会話をしていたはずなのに、その言葉が内容の方向性を変えさせた。
彼女の瞳が何かを訴えている。
「私には要らないんですね」
小さな声だが、辛うじて拾うことができた。
視線が降りていくその仕草が、悲しみや諦めを汲み取らせる。
そこから、彼女はそれを必要としていることが読み取れた。
しかし俺には必要ない。
所有物として置いておきたいのは、結衣じゃないから……。
「あ……のな、結衣」
二人を取り巻く空気が、俺の気持ちを伝えさせる方へ流れ始めている。
「実は……」
上手く言葉が出てこない。
気持ちを伝えることを、何かが躊躇わせている。
小さく燻っていたはずの混沌とした部分が急速に膨らんでいる。
「その……」
でも、いずれは言わなければならない本心。
結衣には必要ない理由。
結衣には……
…………私“には”?
結衣はどうしてそう言ったんだ?
どうして……。
「じょ、冗談ですよっ」
暗い雰囲気を察したのか、慌てて取り繕う結衣。
「お前……何を知ってる?」
「え? 何がですか?」
本当に何のことだかわかっていない結衣だったが、
「言ったよな? 『私には』って」
と言うと、忽ち表情が変わる。
「この前だって……『前の人』ってのは誰を指してるんだ?」
明らかに動揺している結衣は、首筋にあてた左手を忙しなく滑らせている。
結衣……お前は俺の何を知ってるんだ?