後輩は性奴隷……8-2
「そう言えば、何か用?」
煙草を揉み消し、結衣が声をかけてきた理由をまだ聞いていなかったことに気付いた。
「いえ、特に」
彼女はニコニコしながら首を横に振る。
「作戦変更なんです」
「……作戦?」
なんじゃそりゃ。
「宣戦布告する前の、景気付けなんです」
聞けば聞くほど意味がわからない。
「今日は呑みまくるということなのですっ」
「へぇ……」
呆気にとられる俺を尻目に、結衣は店の中へ戻っていった。
なんだか興醒めした俺は、新たに一本煙草を取り出す。
思えば、結衣は突拍子もなく意味不明なことを言う節がある。
体の関係を持ったのも、彼女の一言が全ての始まりだ。
この前だって「前の人と同じ様に」とか、瞬時にはよくわからない言い回しをする。
でも、確かに結衣や真里には、サディスティックな願望のほんの一部しか施していない。
必要なツールはあったものの、言うなれば使い回しになってしまい、それを快く思わないだろうと自分なりの気遣いでそれらを使わなかった。
「………………」
違う。
いや、違ったはずだ。
本当は、朱音の色が染み込んだそれらを他の女に使うと、朱音が消えてしまうような気がして仕方がなかったんだ。
でも、今俺は結衣の側に立って考えている。
無意識のうちに、使い回しを使われる側の立場に立って思考を巡らせている。
それに気付いた俺は、大きな衝撃を受けた。
自分の中で何かが変わり始めている気がするのは、酒のせいなのだろうか……?
思考の乱れを、他の要因にしたがっている自分がいる。
少なくとも、今は目を反らしていたい。
頭がパンクしてしまう。
結衣だって、普通に声をかけてくる程に酔っていた。
外で普通に会話したのは久々のことだ。
きっとアルコールがどこか麻痺させたのだろう。
「作戦ねぇ……」
小さな独り言は、煙草の煙と共に風に舞って姿を消した。