後輩は性奴隷……7-1
本堂の前で手を合わせ、黙祷を捧げる。
黙祷であって、何かを祈願しているわけではない。
敢えて言うのであれば、亡くなった子の冥福を祈った。
「………………」
「………………」
手を下ろしても、互いに言葉は出ない。
この日、俺は朱音と一緒にお墓参りに来ていた。
だが特別にお墓があるわけではなく、供養だけしてもらったらしい。
だから本堂で黙祷を捧げた訳だ。
それをしたからといって俺の罪が軽くなることはない。
俺が軽率なことをしなければ、皆に祝福されて育まれたであろう大事な命だったに変わりはないのだから。
「私ね……」
帰りの道すがら、朱音が唐突に口を開いた。
「私、悠のこと……」
「わかってる」
恨まれても憎まれても、それは当然のことだと理解はしている。
そのくらい俺にだってわかる。
俺は朱音に、大きな傷を負わせてしまったことを自覚しているつもりだ。
朱音はもちろん、他の女だって幸せにする価値もないし、権利もない。
だからあの日以来、俺には恋人という関係の異性は必要ないし、抱くことはあっても避妊は絶対するようにしている。
朱音の言葉を遮ったせいか、彼女はまた口を噤む。
しかし、また重い口を開けて言葉を連ねた。
「……やっぱり悠は悠だった。私の知ってる、あの頃のまま」
一瞬の強い風が朱音の声を切らせた。
サラサラと靡いた薄茶色の髪を耳にかけ、彼女は続ける。
「だからわかるの。きっと悠は……一人で背負ってる」
人一倍責任感が強いから、と朱音は一度区切りを付け、大きく息を吸った。
「でも……私も同じ罪を背負ってる。私がもっとしっかりしてたら、それは避けさせてたと思うの。たとえ、そういう関係でも」
そういう関係。
これが指すものは、「恋人」ではない。
主従関係のことだ。
「だから、あまり自分だけを責めないで? 私は大丈夫だから」
もちろん、亡くなった子を蔑ろにした発言ではないのだろう。
俺が朱音のことを気にかけているのがそれとなく伝わっていたようだ。
彼女は人一倍察しがいいからな……。
「そっか」
情けないことに、俺はこれだけ言うのがやっとだった。
長い沈黙が俺たちを包み込む。
それを破ったのは、またしても朱音の方だった。
「あのね……」
少し思案するような仕草を見せた彼女は
「ううん……ごめん、何でもない」
と、再び口を閉じ、二度と言の葉を紡ぐことはなかった。