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アンハッピーバースデー
【その他 推理小説】

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アンハッピーバースデー-4

俺は手元の一冊を金井に渡した。
「一時はやった十三星座占いってやつだ。ちょうどあってよかった。確認しなけりゃわからないからな」
「正解よ」
金井は両手をあげて降伏した。
「でも、なんで徹に教えてあげないわけ?彼はそれで私と付き合えるのよ」
「それじゃつまらないだろ。金井の思い通りにことが進むだけじゃないか」
「何言ってるの?私が徹と付き合いたと思ってるとでも言うの?」
「その通り」
「まさか、なんであんなちびのこと」
「だったらなんであんな簡単なヒントをだしたんだ?」
「どこが簡単なのよ」
「まさか、本気で気づかなかったとは言わせない。最後の日なら、どんなまぬけだってプレゼントを渡すってことだ」
「そ、それは…」
「それだけじゃない。こんなのは俺みたいに図書館にくればすぐにわかるヒントだ」
「すぐになんてことはないでしょ」
「いや、問題そのものをさらに難しくすることだってできたはずなんだ。なにしろ、十二星座と十三星座を比較して、両方で一日だけ同じ星座になるのは、双子座の六月二十一日だけなんだから、双子座と限定しなくてもヒントになる」
金井は俺が渡した本を調べだした。
「双子座とあえて示したことで、締め切りができたわけだ。もしそれがなけりゃ、出題した日から一年後が締め切りだからな。わざわざはやくしたのは、そうすることで、徹に勝ちを譲るためなんじゃないか?」
金井は星座を見比べて、俺の言ってることが確認できると本を閉じ、長いため息をついた。
それは徹のとは違い、肩の荷が下りたような、ほっとしたようなため息だった。
「なんでわかったの?」
「それより理由が聞きたいね。その後でなら教えるよ」
「やっぱり見た目がねぇ。友達からなんて言われるか目に見えてるじゃん。かけに負けたからってことにすれば、いいわけできるし」
「やっぱそんなとこか。でもな」
「でもなによぉ」
金井はちょっとふくれてみせる。
徹にはもったいなく思えてきた。
「それじゃ、徹が引け目を感じるんじゃないか。金井にしたって、徹がそんなんじゃ、付き合ってても楽しくないだろ」
「それはそうかもしれないけど」
「猶予は後一ヶ月近くあるから考えてみな。幸せな誕生日になるかどうかの分かれ道だ」
「嫌な言い方するぅ」
「もしかしたら徹のやつ、気づかないで終わるかもしれないぞ」
「まさか、いくらなんでもそんなこと」
金井はけらけらと笑った。
「あいつの現状を知らないからだよ。あれみたらわからないからな」
「ま、まさか」
金井の表情が一転曇る。
「だから、さっきの話考えてみることだな」
俺はそう言って立ち上がった。
本を棚に返して帰るつもりだった。
「ちょっとまって。まださっきの答え聞いてない」
金井が俺の手を掴んだ。
「さっきのって、なんでわかったのかってことか?」


金井はこくりと頷く。こんなシュチュエーションじゃなけりゃ、金井みたいな美人に上目使いでみつめられるなんてたまらないだろうに、今の俺にはうっとおしいだけだ。
「自分ではよくできてたとは思ったんだけど、簡単だったの?」
「調べりゃわかるっての」
「それにしては、もってきたの二冊だけじゃない。答えがここに来る前から検討がついてたみたいだけど?」
女っていうのは妙なとこでするどいものだ。
「そうだな。ヒントを聞いた時点で答えはわかってた。調べたのは、金井の狙いの裏付けみたいなもんだ」
「じゃなに、占いおたくとか?」
「んなわけねぇよ」
「じゃあいったいどういうこと?」
金井が期待を込めたような眼差しを向ける。
「そのあれだ」
俺はちょっと言い淀んだ。
「俺の誕生日も六月二十一日なんだよ」
大したことじゃないのに、なんかてれくさいんだよな。


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