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華詞―ハナコトバ―
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華詞―ハナコトバ―3の花-4

「そんなことないよ。ちゃんと伝わってたと思うよ。すごい先方さんも気に入ってくれてたし。」
「そうなのかな・・。」
「そうだよ。もっと自信持って。」
「私、プレゼンの時、全然上手く話せなくて…松下さんいなかったら、きっとダメでした。」
「そうかなぁ。サオリちゃんはもっとデザインの企画出したら良いと思うんだよね。
まだうちに来て1年目だから雑用ばっかりだけどさ、そのうち僕と一緒にデザイン考えたりしようよ。」
「そんな、買い被りすぎですよ。」
「そんな事ないよ。」

松下さんが真剣な顔に一瞬なったのでドキドキしてしまう。
いつもはふわふわしているのに、急に真面目になったりするから、ドキドキしっぱなしだった。
一緒に仕事をするうちに、どんどん松下さんが好きになった。
でも、松下さんは神野さんと…と思うと、少し前まではお似合いだと思っていたのに今では心がとても苦しくなる。

「ありがとうございます。松下さんって優しいですよね。今日も私を励ますために
ここに連れてきてくれたんですよね。」
「え、そんなつもりじゃないよ。」
私が頼んだカクテルはちょっと度数が強かったのかもしれない。
緊張が解けてほっとしたからか、お酒のまわりがいつもより早い。
「そうですか?神野さんに悪いです。」
「なんで、ユウカが出てくるの?」
最低だと思いながらも言葉がとめどなく口から出てきてしまう。
「だって松下さんと神野さん、付き合ってるんですよね?私なんかと飲んでたら悪いです。」
「…付き合ってない。」
「えーウソですよ。事務所で噂ですよ。週末2人でよく飲みに行ってるし
松下さんは神野さんと結婚して次期社長だーって。」
松下さんの顔が一瞬曇る。
こんなことが言いたいんじゃない。それなのに言葉が止まらない。
「…サオリちゃんは、その噂、信じてるの?」
「…私は…。」
松下さんに正面から見つめられる。
さっきまで止まらなかった言葉が今度は全く出てこない。
「誤解されたくないから言うけど、週末ユウカと二人で飲みに行ってるんじゃないよ。
あいつ、再来月結婚するんだよ。俺の友達と。それで結婚式のアイテムとか、
打ち合わせがてら3人で週末は会ってるだけだよ。」
「…。」
「他の人には誤解されても良いけど、サオリちゃんだけは、嫌だから。」
松下さんはそう言うと、座りなおしてカクテルを一気に飲み干した。
恥ずかしいのか、酔っているからなのかわからないが、松下さんの横顔がどんどん赤くなっていく。

「あの…それって…。」
「あーあ。俺って肝心な時に恰好悪いよね。」
松下さんがうなだれる。それが何だか可愛くて笑ってしまう。
「なんだ、そうだったんですか。お似合いだなって思ってて。私こそ誤解して、嫉妬して恰好悪いです。」

松下さんは最初「?」といった顔をして私を見ていたが、まさか?と言いたげに口を開いて私をしばらく見つめた後、ゆっくり笑った。

「なんだ…。そっかぁ。お互い、格好悪いね。」
「はい。」
2人で顔を見合わせて微笑む。
「あ、そうだ、これ、忘れてた。」
松下さんが自分のバッグから細長い箱を取り出して私の前に置いた。
「なんですか?これ。」
「開けてみて。」
綺麗に包装された包みをゆっくりと開ける。


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