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華詞―ハナコトバ―
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華詞―ハナコトバ―3の花-2

コンコン。

呼吸を整えてミーティングルームのドアをノックする。

「あいてるよー。」
「失礼します。」
部屋に入ると、松下さんが既に座って企画書に目を通していた。
「すみません、遅れました…。」
「え、そう?ぴったり13時だよ?俺が早く来すぎたんだよ。」
松下さんはニコッと笑うと、前に座ってと目配せをした。
「来週なんだけどね、新しいアイテムの商品化の交渉にサオリちゃんも来てほしいんだよね。
そんな難しい事じゃなくて、ちょっとだけプレゼンしてもらったりするだけなんだけど…。」
「え?プレゼンですか?」
「そうそう。少しだけだから安心して。きつかったら僕がフォローいれるからさ。」
「…でも、何で私なんですか?」
「え、嫌だった?」
「や、そうゆう意味じゃなくて…。」
私が口ごもると、企画書を松下さんがパラパラめくる。
「サオリちゃん、午前中企画書、目を通さなかったでしょ。」
「え、あっ…。」
「あーそれともユウカが渡し忘れたのか。あいつ…。」
「いえ、神野さんから受け取りました!私が最後まで見れてないだけです。ごめんなさい!」
デスクにおでこが付くくらい頭を下げる。
確かに今朝、神野さんから資料をもらって、目を通していたのだが、バタバタと違う仕事を任されたり、
ぼーっと考え事もしていたせいで、最後まで目を通せなかったのだ。
「くっくっくっく…。」
声を殺したような笑い声が頭上で聴こえた。
「あははははは。サオリちゃん、だから堅いってば。いいよいいよ。
急な話だったし、資料も多かったしね。気にしないで。」
松下さんは笑いをこらえながら企画書の真ん中あたりのページを指さす。
「あっこれ…。」
「そう。これ、サオリちゃんのアイディアの製品なんだよ。この前の忘年会で話してたでしょ。
この前社長に話したら面白いねって事になって、そしたら社長の知り合いのメーカーさんがうちで作らないかって
どんどん話進んじゃってさ。サオリちゃんに許可とる間もなく急展開になっちゃったんだ…。ごめんね。」
企画書の上部にはシンプルだけど、綺麗なボールペンのイメージが載っている。
すごい…。私の話、覚えててくれたんだ…。
「僕がサオリちゃんから聞いたイメージで何となく載せただけだからさ。これはあくまで仮の企画書。
サオリちゃんのイメージちゃんと聞かないといけないって思ってさ。本当ごめんね。怒ってる?」
松下さんが少し不安そうな顔で私を見つめる。
「本当勝手に進めちゃってごめん。でもこうゆうのってタイミングと勢いで上手く行く時って行くからさ。
絶対商品化したらいけると思うんだよね。」
まさか自分が考えた物が商品になるなんて思ってもみなかったから、
嬉しさと感動で言葉がうまく出てこない。
「いや、サオリちゃんが嫌だって思うなら良いんだ。でも僕はすごく良いなって思った。」
松下さんが私をまっすぐ見つめた。
真剣な顔に思わずドキっとしてしまう。
「あの、すごく嬉しいです…。私、頑張ります!」
「ははは、良かったー。それにしても今回時間が無いからさ。うちはスタッフも少ないし
2人で不安かもしれないけど、一緒に頑張ろうね。」
松下さんがニコッと笑い、右手を差し出す。
私はドキドキしながら手を差し出して握手をした。
「あー良かった。もし怒っちゃったらどうしようって思ってたんだー。」
松下さんは手を離さないまま、左手で頭をかいた。
「いや、怒るなんて、とんでもないです。すごく名誉な事です。」
「あはは、名誉かー。良かった。」
「…あの、松下さん、手…。」
「え、あっごめん!離します。」
そう言うと松下さんが右手をぱっと話した。
何となく顔が赤い気がしたけれど、私の方が赤くなっているような気がして恥ずかしくなった。
お互い顔を見合わせて少し笑う。


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