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愛しのお菊ちゃん
【ホラー 官能小説】

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愛しのお菊ちゃん4-2

「あ…あの…帰りの道が…わかりませぬ」
顔を臥せたまま、恥ずかしそうに囁くお菊ちゃん。
なんだ…迷子になっちゃったんだ。

ホッとする僕。
そうだよね…あの石碑までは結構距離あるし。
ん?来る時はどうやってきたんだろ…まぁいいや。
それよりも…。
「そんだったら今日は泊ってゆきなよ」
ニッコリと微笑みながらお菊ちゃんの腕に触れる僕。

「そんな…おそれ多い事を…」
まだモジモジのお菊ちゃん。

「そんな…僕とお菊ちゃんの仲じゃん!遠慮しないで泊ってゆきなって」
すっかり恋人気分の僕。
むしろ泊っていって欲しいくらいだ。

不意に正座をして両手の三つ指を床につくお菊ちゃん。
「馬小屋でも納屋でも構いませぬ…菊を一晩お泊め頂けますでしょか」
深々と頭を下げるお菊ちゃん。

「そんな馬小屋も納屋もないし…一緒に寝よ」
僕はしゃがみ込むとお菊ちゃんの身体を起こしてあげた。

「と…俊樹さま」
お菊ちゃんはウルウルした瞳で嬉しそうな笑みを浮かべた。


とは言っても寝るまではまだ時間がある。
僕とお菊ちゃんは再び並んでソファに腰を下ろした。

「テレビでも見よっか?」
リモコンでテレビのスイッチを入れた。
最近始まったドラマを映しだすテレビの画面。

「く…曲者!」
お菊ちゃんがびっくりした様に僕の腕にすがりついていきた。
「俊樹さま…かような箱の中に曲者が潜んでおります」
真剣な眼差しで僕に訴えるお菊ちゃん。

「あっ!アレはねぇ…アレはテレビだよ」
テレビの事は何て説明すればいいんだろう?
ん〜ん。
考え込む僕。

「テ…レビ?」
お菊ちゃんはそんな僕とテレビをドギマギした瞳で交互に見てる。

そうだ!
「アレはね…遠くでやってるお芝居を近くで見るキカ…いやカラクリ箱なんだよ」
こんな説明で判るかなぁ。

スッと立ったお菊ちゃん。
恐る恐るっていった感じでテレビに近づいてる。
「これが…カラクリ箱…」
本当に興味深々って感じだ。
そしてソファに座り直すと。
満面の笑みで僕を見つめるお菊ちゃん。
「菊も…お芝居は大好きでございます」
よかった…理解したみたい。

僕はもっとお菊ちゃんを喜ばせたくて…。
「こんな事も出来るんだよ」
チャンネルを変えて見せた。
変わった画面は外国のアクション映画。
ちょうどカーチェイスのシーン。

「あっ!あぶのうございます!」
僕を庇う様に抱きついてくるお菊ちゃん。

うっ!なんていい子なんだ。
僕は心の底からジ〜ンときた。
「アレもお芝居だよ…お菊ちゃん」
抱きついてきたお菊ちゃんを放さずに僕はその耳元で優しく囁いた。


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