昏い森−睡蓮−-8
「ああ、そうだよ。その屋敷は森近くにあるから、お前ともずっと一緒に居られるだろう」
睡蓮は嬉しそうに笑った。
月明かりに照らされた、白い肌はそれこそ水面に浮かぶ睡蓮の花のように美しい。
「あの時、貴方に拾って貰って良かったわ。こんなに世界が美しいなんて、知らなかったの」
くすくす笑って娘は森羅に寄り添う。
森羅は睡蓮の髪を梳くと、そのまま引き寄せて口を噤ませた。
相も変わらず、甘い味が広がる。
贄でもないのに。
森羅は愉快になる。
このところ、否、この娘といると頗る心地が良い。
これが俺の、俺だけの伴侶だ。
あの者たちへ、どうだと叫びたい。
見つけた。俺も見つけたのだ。
森羅は嬉しくて、睡蓮をきつく抱きしめる。
静かな夜に、ちりりんとまた鈴の音が響いた。
〈完〉