6・姉と弟と揺らす腰-4
「今日はもう終わりだよ、お疲れ様。雅」
スタジオを出たら、まりなが手を広げながら近付いてきた。
そしてそのまま抱き付いてきたので、思わず顔を背ける。
「バカ、人がいるんだぞ。見られたらどうするんだ」
「いっつも自分から抱き付いてくるくせに。今更変に思わないわよ、皆は」
・・・そうだ、まりなにつっこまれた通り、いつも俺からやってる。
このやろう今日はやけに反抗的じゃねえか。仕返しか、腹いせのつもりか?
「・・・・あっち、いこ」
「あ?」
まりなは隅の方を指差して、俺から離れてしまった。
「早く早く、おいで」
俺を手招きしてる。本当にさっきから何のつもりだ、お前は。
言われた通りにしたらまた抱きついてきて、そして・・・
「んっ!お、お前っ」
「・・・・早く、雅の家、行こう。もう待てないのぉ・・・」
自分からキスをして、まりなは呟いた。
さっきから戸惑いっ放しだったけど、そこまでしたいんだったら望み通りにしてやろうか。
・・・・何だったら今すぐここでやってもいいんだぜ、まりな。
お返しにこっちからキスしてやったら、まりなは目を細めて微笑んだ。
普段は見せないその仕草に、思わず胸が高鳴るのを感じた。
車から降りるとすぐにまた俺に抱きついて、離れようとしない。
参ったな、こうしてるとまるで立場っつうか役割が入れ替わったみたいだ。
「雅ぃ・・・なんでさっきから何もしてくれないのぉ」
「べ、別に俺は遠慮なんかしてねえぞ、でも、マンションの入り口で抱き合うのはよ・・・・・」
「どこかで聞いた言葉ね」
「おっ、お前なあ!」
やっぱりまりなは仕返しするつもりだろうか。
やりたい、我慢できないなんてのは単なる建前で、俺を思う存分悔しがらせるつもりだったんだな。
畜生、反応が面白いからってちょっとやり過ぎたか。
今迄のマネージャーと違ってまりなは何をしても堪えてたから、つい調子に乗っちまったんだ。
・・・・まりなは、どんな酷い事をしでかしても、黙って受け入れてくれた。
いいや、されるがまま、って言った方が正しいだろうか。
「・・・まりな」
「やっとその気になってくれた?」
「・・・・いや、その・・・」
ベッドに座り、スーツの上着を脱いでいるまりな。
既にその気らしく期待を込めた眼差しで俺を見つめてくる。
こういう顔されると、何だかむず痒い。
いつも怯えてるくせに・・・何で今日はやりたがってんだよ、このスケベ。