6・姉と弟と揺らす腰-2
「雅はさ、寂しがり屋なんだよ。話し相手を欲しがってるんだ」
知ってるよ、もう。
日比野君とも良く話してるからね。
お喋りな人はわりとそうだし。
「あいつな・・・姉ちゃんと、その・・・」
私は思わず足を止めて振り返っていた。
でも日比野君は目を逸らしてしまい、困惑した顔を見せている。
「・・・・はっきり言いなよ。お姉さんと、どうしたの」
「いや、俺もはっきりとは分からないんだ。その、雅は、あんまり姉ちゃんと仲良くないっぽいんだよな」
前から気になってたけど、どうやら本当らしい。
日比野君は適当な事ばっかり言ってるが、少なくとも雅に関して嘘はつかなかった。
「なんかさ、どう話したらいいか分かんないってぼやいてたから、多分仲良く無いんだろうな」
以前、雅がお姉さんの事で私に突っ掛かってきた事があるのを思い出した。
心配されるのがおかしいのか、って言ってた・・・確か。
殆ど自分の口から話さない事だけど、気にしてるなら仕方ないのかな。
あまり知られたくない事をわざわざ話したりはしない・・・か。
「日比野君も一応役には立つのね、お礼は言っとくわ」
「いいんだよお礼の言葉なんて。その代わり、体で払ってくれれば!」
抱きつこうとして来たのを迎え撃とうとした。
けどそれはやめて躱すだけにしたら、日比野君は勢い余って前の自販機に激突してしまう。
でも私だと思ってるらしく、チュバチュバとボタンを啄んで、手で厭らしく撫で回していた。
どこかで見た光景だ、と思いながら私は休憩所を後にする。
「うへへへへ、まりな、緊張してんのか?ガチガチだぜ。堅くなりすぎて体が真っ平らだぞ」
・・・・・本当に私だと思ってるのだろうか?
脳天気だと思ってたけれど、日比野君はもしかしたら単なるお馬鹿さんなのかもしれない。
それにしても、雅はお姉さんとうまく話したがってる癖に心配されるのを嫌がるなんて、まるで子供ね。
・・・日比野君は分からなかったみたいだけど、弟がいる私には雅の気持ちが少し理解できた。
あの子がやたらと寂しそうにするのは、多分・・・