後輩は性奴隷……4-2
長かった短かったような初夜勤を終え、崩れるようにベッドへ身を投げる。
時刻は7時半。
今日は1日何もない。
結衣にも夜勤と言ってあるため、彼女の姿はなかった。
あの後、清瀬さんはしばらく朱音との関係を聞いてきたが、俺は上手く誤魔化していた。
彼が言うには、朱音は夜勤の時間帯では常連さんらしい。
まさか、そんな数時間の差で擦れ違っていたなんて……。
上原朱音。
彼女は同い年で、中2から高2の間まで付き合っていた元カノだ。
最初で、今のところ最後の恋人である。
俺たちは若いなりにも将来を見据えた付き合いをしていた。
しかし、俺のせいで関係が崩れてしまったのだった。
忘れもしない、高2の夏。
俺は……朱音を妊娠させてしまったのだった。
隠し通せる訳もなく、朱音の両親にこっぴどく叱られた。
無論、おれは責任を取るつもりでいた。
でも、それはあまりにも若輩者の考えだったんだ。
その後、彼女との関係は強制的に絶たれ、夏休みが終わるまでに、朱音は引っ越していった。
それでも俺は彼女が忘れられずにいる。 今の通っている大学も、進路を意識し始めた高2の春の時に一緒に行こうと約束した所なのだ。
例のレシートを取り出す。
迷う必要はない。
俺は朱音を待っていた。
また会えるこの日を、ずっと待ってたんだ。
そう、迷う必要なんて……。
煙草を一本取り出す。
携帯を机に置き、煙を吐きながら天井を見上げた。
朱音はどうなんだ?
彼女も、俺と会う日を待っていたのだろうか?
確かに、連絡先を教えてきたのは事実だ。
でも、それは……。
それは……………………?
携帯を手に取る。
自分が微かに緊張しているのがわかった。
少なくとも、俺はこの日を待っていたんだ。
そして、この機会を逃すともう二度とないかもしれない。
でも……俺には……。
いや、迷う必要は……ない。
迷う必要なんて、微塵もないんだ。
俺はメール画面を覗き込み、レシートの裏のアドレスを慎重に打ち込んでいった。
昼下がり、俺は学校近くの公園に出向いていた。
すっかり葉桜になった木々を眺め、微かな緊張を緩和させる。
朱音にメールし、しばらくやり取りした後、ここで落ち合うことになったのだ。
携帯を開くと、デジタルの時計が2時を示すところだった。
「悠……?」
その声に空気が張り詰めるのを感じた。
振り返ったそこには、外見は変わったものの、柔らかく温かい雰囲気を漂わせる彼女がいた。
「あ、あかね……」
彼女はぎこちない笑顔を浮かべながら歩み寄り、隣に座る。
ライトブラウンの、内側に巻いた長い髪がふわりと揺れて、シャンプーのいい香りが鼻孔をくすぐった。
「……久し振りだね」
「あぁ……」
聞きたいことは一杯あったのに、いざ本人を前にすると頭が真っ白になってしまう。
「どうしてた?」
「いや、普通に……」
普通って? と自分が答えたはずの言葉に自問しながら苦笑を噛み殺す。
そよ風が吹き、木々がざわめいた。