後輩は性奴隷……3-1
「夜勤……ですか?」
バイトが終わって制服を脱いで帰ろうとしていた俺に、夜勤のトップ的な存在の人が話を持ちかけてきた。
「うん。悠君も来年は就活だろ? 今のうちに金貯めといた方がいいと思うんだけど……ってか、俺以外の夜勤勢が就活で融通きかんってのが本音なんだけどね」
と、苦笑を滲ませるこの人はフリーターで、名は清瀬と言った。
確かに夜勤は時給が良く、今までガッツリ単位を稼いでいた俺にとっては悪い話ではない。
だが、即答するのは躊躇われた。
「ちょっと考えさせてください」
同じコンビニの夕勤と夜勤とはいえ、一から覚えなければならない仕事もあるだろう。
何より、夜10時から翌朝7時までとなると体力的にもキツイ。
他にも、多少とはいえ授業を登録しているし、部活との兼ね合いもある。
「そうだよな……」
と清瀬さんはまたも苦笑して
「まぁ、ちょっと考えといて」
と軽い調子で俺の肩を叩く。
小さく挨拶をした俺はコンビニを出ていた。
4月も半ばに差し掛かっている。
通常授業が始まったこの時期の夜は、冬の名残を感じさせた。
下宿先には結衣がいる。
彼女には合鍵を渡していて、バイトが終わる前に連絡をしていた。
でもなんだか今日は……今夜は彼女を虐げる気にはなれない。
自分の今後や将来のことを突きつけられ、そんな大きな事を考えさせられる機会に直面したせいかもしれない。
俺は何故この大学に入ったのか。
何故写真部に所属しているのか。
何故……。
重い足取りの俺の横を、何台かの車が追い抜いていった。
家では結衣が炬燵布団を肩までかけ、ちょこんと座っていた。
静かな空間で、携帯をカタカタと打っている。
「お疲れ様です」
俺の帰宅に気付いた彼女はペコリと頭を下げた。
「テレビくらい点けたらいいのに」
「あ、でも電気代が……」
細けーなぁと思いつつ、俺はリモコンを手に取りテレビの電源を入れる。
静かな空間に、堅苦しいキャスターの声が広がった。
「それは?」
机の上の紙袋について促すと、
「お腹空いてるかな、と思って……」
と言いつつ、結衣は弁当箱のような物を取り出した。
一応廃棄を食べてはいたが、折角なのでいただくことにした。
彼女は普段コンタクトをはめているようで、今は楕円レンズを桃色の縁で囲んだ眼鏡をかけている。
そのレンズ越しに、ニュースをぼんやり見ながら弁当箱をつつく俺を覗き込んできた。