5・好きと勝負と苦しい胸-1
ミートソースのスパゲッティが、やけに噛み応えがある様に感じた。
それより、好きな筈なのにあんまり美味しくない。
半分以上残ってるけどもう食べたくなくて、冷蔵庫にしまい込んだ。
歯を表面だけ磨いてさっさと口を濯ぎ、足を引き摺りながらベッドに潜り込む。
「ふうーっ・・・・・・」
何だか食べる事や歯磨きに続いて寝る事も億劫に感じた。
本当は考えたくないんだけど、振り払おうとしても意識にしっかり刺さり、忘れさせてくれない。
雅の顔が瞼の裏に焼き付いていた。
・・・一体私はどうしてしまったのだろう。
雅の事を考えると、何故か落ち着かなくなってしまうのだ。
今、どうしてるのか、1人で何してるんだろうとか、些細な事が気になって仕方ない。
電話しようとしたけど、どうしても出来なかった。
仕事の話だったら出来るんだけどただ気になるから、って理由だと思うと、指が動かないのだ。
・・・雅・・・
「ふぅ・・・ん・・・っ」
雅は・・・・・本当は強くないんだ、きっと。
寂しいだけじゃない、私に会いたがる理由は他にある。
「はあっ、あっ、あはぁ・・・んふぅ、んん・・・」
でも・・・どうしていつもエッチな事をするの。
なんでそうなの、教えて。雅・・・・・・
私は只の、性欲を処理するだけの役割なの・・・?
でも・・・もしそれだけならどうしてあの時、帰るなって言ったんだろう。
家族が帰って来ない、1人ぼっちの部屋の中で過ごすのは嫌だったから・・・?
「あっ、あぁあ・・・あっ!雅、雅ぃぃぃ・・・っ!」
どうして・・・もっと相談してくれないんだろう。
いつもあなたはそう、へらへら笑ってばかりで、肝心な事は喋ってくれない。
教えてよ・・・どうしたらあなたと心を通わせられるの・・・?
「は・・・ッ?!」
急に指に粘り気と熱を感じた。
嫌な予感がして自分の手の場所を探すと・・・
「や、やだ、何でこんな、何考えてるの・・・!」
下着の中に突っ込んで、大事な部分をまさぐっていた。あり得ない事だけど自分でしていると全く気付かなかった。
雅の事を考えていただけなのに何で・・・・
意識を離れて本能で動いてたのだろうか、私の指は。
いや、違う。頭の中に浮かんでいたのは、いつもの光景だった。