第三話――魔人と死神と皇国の聖女-6
「……なにをやっているんですか、きみたちは。子供じゃないんですし、もう少し、落ちつきのある行動を取りなさい」
パスクは、自身の持つ先のねじまがった実に魔導師らしい禍々とした杖の先で部下ふたりの頭を、それぞれ軽く小突いた。
普段は彼に対して従順な部下たちだ、事態も収束に向かうとアリアは予想した。
だが、今日は違った。
「隊長に言われたくないよ!」
「隊長に言われたくないっす!」
パトリシアとゲルハルトの声がハモった。
口々に続ける。
「大体、隊長が護衛の兵を断りなんかしたから闇討ちなんて受けたんじゃない!」
「そうっす!しかも、隊長が一瞬で相手がフェニックスの戦士団の刺客だと見抜いて、まあ、見抜くだけならまだしも、ソレを言っちゃうから相手も退くに退けなくなって、決死の覚悟ってヤツになっちゃったんじゃないっすか!」
「そのうえ、リンクスの姫やその配下を罵られたからってマジになって『黒雷』“タイラントサージ”なんて打っちゃうから、辺りを警戒していたドラゴンの騎士たちまで集まってきちゃうし!」
「さらに、一通り暴れたからって清々しい顔で刺客まで逃がしちゃって、証拠も一切の残ってないじゃないっすか!」
「ドラゴンの騎士には呪文が暴発しただけって――どう、暴発したら桑林が焼き終わった畑みたいになるっていうのよ!」
「ああっ、アレは絶対にヤバいっすよ!それこそ、フェニックスの鳥頭あたりが鬼の首を取ったかのように責任の追及をしてくるっす、きっと!」
「………………」
「「……?」」
言いたいことは言い切ったのだろう、パトリシアとゲルハルトの叫びが一段落すると室内は何度目になるだろう、シラー、とした空気に包まれた。
漆黒の魔導騎士ジーン・クルバがこめかみに青筋を浮かべ、嘆息を一つ、口を開いた。