第三話――魔人と死神と皇国の聖女-18
「あの、パスクさんっ……。わ、わたし、頼りないかもしてませんけど……これでも、い、一角獣の国の『聖女』、ですからっ……もし、我が国の精鋭に不備が、あるの、でしたら、な、なんでも仰って……」
「いえいえ、不備――とは言いません。確かに、名を聞くユニコーンの第一聖騎士団です。高い練度もありますし、各小隊の隊長方の統率力も申し分ありませんよ?」
「でっ、ですがっ」
「ええ、ですが……ですね。おそらく、聖獣八ヶ国内で騎士団同士の模擬戦をするのであれば、かなりの勝率を誇れるでしょう。しかしね、あれでは、ゴルドキウスには勝てません。いえ、勝てないどころか――帝国のもっとも得意な相手と言えましょう」
「なんで、ですか?」
ハーティが、顔を青くして訊ねてきた。
パスクはそんな少女に微笑みかける。
「相性の、問題ですね。せっかく、視察したのですし、おためごかしで終わらせては実がない。この際、はっきり言いましょう。私は彼らの訓練を目に、次にどの隊がどう動くか、読めました。圧倒的な兵力差があり、地の利があれば別なのでしょうが……采配を読まれては、あまりにも分が悪い――でしょう?」
そこで、パスクは首を傾げる。
ハーティの顔が、さらに曇った。
だが、パスクは「けれども――」と続ける。
「繰り返しになりますが、聖騎士団の能力自体はかなりのものです。ですから、実践的な訓練の導入を――いえ、現在でもそのつもりなのでしょうが、もっと、ですね。それこそ、互いに限界状態での紅白戦を行わせるとか、そういったことをするよう、ユニコーン本国にハーティから打診していただけますか?私からでも構わないのでしょうが、ホラ……私、嫌われ者ですし」
そこで、パスクがチラリと、たったいま、入城してきた三名の初老の男性に目を向けた。
ふたりはフロックコートを羽織っており、ひとりは司教服の上に白色のスルプリを纏っていた。そろって、胸元には不死鳥とカヤの葉の紋章を印している。