第三話――魔人と死神と皇国の聖女-17
「ユ、ユニコーンでは文武両道を心得に、してまして……練度、は……高いと……」
「…………ふむ。そうですね。ハーティ?」
パスクが、ハーティの顔を覗けるように中腰になり、目線の高さを合わせた。
彼を詳しく知らない人間は、ジッと、その切れ長の双眸に見つめられれば、当然の畏怖を覚える。
もちろん、ハーティもそうだった。
「ひぅっ……?」
小さく、漏れ出すような悲鳴をアリスは聞き逃さなかった。
だが、ソレがパスクには聞こえないのか、はたまた、わざと無視したのか、一見冷血漢然とした魔導師は続ける。
「政治的な、当たり障りのない話しで済ませてほしいですか?」
「ちょっ……パスクっ?きみは、なんて聞き方をしているんだ!」
アリスは、パスクの白色のローブの袖を引っ張った。可愛そうに、ハーティは目をむいて絶句してしまっている。
一方、パスクは、顔を上げ、こちらに向けてくると、いぶかしそうに眉根にシワをよせた。
「なんて、と言われましても……」
「パスク……。いまの聞き方だと、彼の聖騎士団に問題があるように聞こえるぞ?」
「…………さすが、アリスさん。よくわかりましたねェ?」
「っ……ハァ。たまに呆れさせるな、パスクには」
感心そうに頷くパスクを目に、アリスは額へと手を置く。
そこで、ようやく決心がついたのか、ハーティが口を開いた。