第三話――魔人と死神と皇国の聖女-16
「――お、お久しぶりです、パスクさん!今日は、我が国の……ええと、なんだっけ、ルード?」
「第一聖騎士団の視察の要請……」
「そ、それ!……ぁ、と。その、我が国の第一聖騎士団のし、視察をようせ――の!要請をお受けいただき、感謝いたします!」
少女は最後に、ちょこんと、その緋色の頭髪の頭を下げた。
どのような贔屓目で見てもグダグダという感想を抱かざるをえない、そんな礼を述べるこの少女こそが『ユニコーンの聖女』ハーティ・マッキンレー、その人だ。
歳は満十四だというが、実年齢よりもわずかばかり、幼く見える。赤というよりも橙色に近い色の、ショートカットにした髪の毛は細く、サラサラしていた。丸い額が特徴的な、可愛らしい少女だ。
しかし、色白なのは確かなのだが、大きな瞳に血の気のある頬など、パスクとフィルのような酷似性からは外れている。
やはり、『聖人』『聖女』だといっても容姿が似かよるわけではないのだ。パスクとフィルが似ているのは、ただの偶然のようである。
……そんなことを、アリスはふと思った。
「あ、あの……我が国の、騎士たちは、いっ、いかが、でしたでしょう?」
ハーティが、モジモジと俯きがちにパスクとフィルへ訊ねた。
聞くところによると、このアリスの胸元程度の背丈しかない小柄な少女は、商家の出らしい。
ある時、森でルードと出会い、その主となったために『聖女』と認定され、一角獣の国の代表として各国の歴々を相手にしているのだが……中身はまだまだ可憐な娘でしかないのだ。
案外、軍議でのパスクの無慈悲な発言に、引いてしまっているのかもしれない。
アリスの予想もまったくの見当違いというわけではないようで、ハーティは言葉を選ぶようにして続ける。