第三話――魔人と死神と皇国の聖女-11
「ご安心ください。このたびの一件、フィル様に責任はありません。それどころか、パスクさんを心配し、同行していただいたことに――リンクスを代表して、感謝いたしますわ」
「…………エレナ、王女。お心遣い、こちらこそ感謝いたします。――未熟ですね、私は」
「未熟、ですか?」
「はい。同じ『聖人』であるはずのパスク公と比べ……私は、なんと矮小な心持ちのことでしょう?」
「ふふっ」
フィルの言葉に、エレナがクスクスと口元に手を当てて笑った。
怪訝な顔をしたフィルへ、あわててエレナは告げた。
「ごめんなさい。フィル様を笑ったわけではなく――みな、考えることは同じだな、と……。パスクさんは……いえ、彼だけでなく、彼の元に集った方々は特別ですから」
「とく、べつ?」
「ええ。みな、過去を持っています。ですが、それは私も、フィル様も同じなんですけどね?」
そこまで言うと、再び、エレナはくすぐったそうな笑い声を漏らした。
疑問符を浮かべる一同。
アリスにしたって、パスクを除けば、彼らの過去などは大して知りはしないのだが……。
エレナが、いたずらを見つかった幼児のように、ウィンクをした。