お兄ちゃんの忘れ物-4
「ふう、じゃ俺帰るわ。いつになるか分からんが、またな」
「もう帰るの?お茶くらい出すよ」
「いやいやいいよ、気を遣うな。じゃあな、明乃。ありがとう」
意外と帰る時はあっさりしてるのだ。
でも、友達とは違うから別に無理に引き止めたりはしない。それが兄妹、だろう。
「・・・・・社会人、かあ」
まだ先の話だけどそんなに遠くはない。
その時は、お兄ちゃんにスーツ姿を見せるのかな。
・・・どんだけブラコンなんだよ、なんてつっこまれそう。自分だってシスコンなのに。
いくら何でも笑えない。今の私なら有り得そうだから。
「・・・ん?」
携帯に着信・・・誰からだろう。
いや、違う。メールだ。
まさかお兄ちゃんから・・・?
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題名 お兄ちゃんの忘れ物
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本文 トイレ
何コレ?
まさか届けろってこと?冗談でしょ。
もう、お兄ちゃんてばどこか抜けてるんだから・・・
仕方なくトイレに入ったけど、それらしい物は見当たらなかった。
私をからかう為にメールしてきたのかなぁ・・・或いは、さっきの照れ隠しとか。
ため息をついて出ようとしたら、トイレットペーパーの上に何か有るのを見つけた。
・・・メモ用紙だ。
それを見た瞬間、頭の中に懐かしい記憶が蘇る。
「回りくどいんだから。ヒントがあったら、達成感とか無いでしょ」
嬉しくて呟きながら、折り畳まれたメモを開いていく。
ここに、お兄ちゃんが本当に伝えたかった事が書いてある・・・・・・
¨いきなり来てごめん。
4月からお互い新しいスタートだけど、俺達はずっと兄妹だ。何も変わることは無いだろう。
口で言うのは恥ずかしいからこういう形で伝える。明乃、頑張れ。 お兄ちゃんより¨
自分で見つけたんじゃないけど、私は初めてこの遊びで達成感を得た。
でも、ゴールじゃない。
これからがスタートなんだ−
〜〜おしまい〜〜