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どこにでもないちいさなおはなし
【ファンタジー 恋愛小説】

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どこにでもないちいさなおはなし-50

 「いやぁ、悪かった、悪かった」

手を繋いだままのリールとマイティが三人と合流する頃にはずいぶんと日が暮れていました。マイラはすっかり不機嫌にマイティを睨みましたがリールには頭を撫でて笑顔を見せました。
ジャックが馬を進めると誰となく歩き始め、マイティは落ちていた木の枝に油を染み込ませた布を巻きつけて火をつけました。辺りが明るくなりリールはマイティとの手を離して、ティアンとそっと手を繋ぎました。

「ティアン、待たせてごめんね」

ティアンは手を繋がれた事に驚きましたが、すぐにリールの顔を見て首を振りました。
しばらく歩くと山の頂上から隣の山までつり橋がかかっていました。ジャックの足が止まり、馬もそこで止まりました。

「馬は無理そうだな」

ジャックがそう呟くと、馬は寂しそうに鳴きました。そっと撫でてやると首を下にやり俯くのでした。
荷物は随分と減っていました。マイティとジャックは手分けして荷物を降ろしそれぞれの肩に背負いました。

「必ず迎えに行く。だから、お前も自分の身を守って俺を探せ」

ジャックはそう言って馬のベルトと鞍を外してやりました。しばらく馬はそこから離れませんでしたが、リール達がつり橋を渡りきる頃にはいなくなったようでした。

「ジャック」

リールは前を歩くジャックを呼び、後ろを気にしました。ジャックは立ち止まりリールの方を振り向くと首を振りました。

「駄目だよ、リール。あの子より君の方が大事なんだ。それにあの子にはまた必ず会える」

悲しそうなその顔を見てリールは唇を噛み締めました。それでもマイティの言葉を思い出し、頷くと先へ行こうと言いました。そんな空気を壊すようにマイティが一番後ろからジャックに声をかけました。

「ジャック、あとどれくらいで着くって言うんだ?そろそろみんな疲れてるだろう」

ジャックは前を向いたまま山道を進み、マイティに返しました。

「今晩中には着くと思うが何しろ結界があるからな。ただ風向きが変わったからあっちも気づいたんだろう」

ティアンは思い切って口を開きました。

「メリーガーデンの人は風を操るの?」

「いいや、違うよ。彼らの感情で風が動くんだ」

答えたのはマイティでした。ティアンは後ろを振り向くと目をきょろきょろ動かしました。

「彼らは自然と二番目に仲が良いんだ。イヴ様よりもね」

ふーんっとティアンは頷きました。リールもマイティに同意するように頷いていました。
それから随分と暗い山道を慎重に降りていって視界が開けた場所に着きました。そこから下には森が広がり森の中心辺りが広く光の壁で区切られているのが見えました。

「ほら、見てごらん。あそこがメリーガーデンだ」

ジャックはリールに視線を合わせるようにしゃがんで言いました。リールは目を凝らして見て頷きました。
ティアンも同じように見て首を傾げました。


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