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どこにでもないちいさなおはなし
【ファンタジー 恋愛小説】

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どこにでもないちいさなおはなし-3

彼は大袈裟な身振りで水がなくなると、悲観するような様子を表現する。
若いまだ無知な女はそれをみて、本当に悲しく怖そうな顔をして彼にこういった。

「まぁ、本当なの?それはイヴ様でもどうにもならないの?」

すると得意げな顔を浮かべたマイティ・マイティは女の肩を抱きかかえると力強く引き寄せて、こう話し始めるのだった。

「それがこの世界には壁があっても蓋がない。空があれば太陽がある。雲もあれば、雨が降る。土があって植物の種が尽きない限り、水の心配なんてしなくなって………、いいのさ」




 あれから二人はまだ、あの場所からそう遠くもない場所にいて恐る恐るしっかりと手を握ったまま芝を歩いていました。

ホタル茸は次々とぼんやりと青白い光りを灯しその数が増えていきます。
頭上ではフクロウがホー…ホー…と、寂しげな声を出し。
遠くまでその声が届いては反響して聞こえていました。

自然に小さな声で話しをするようになった少女は上等な上着を着たカエルの手をくいっと引っ張っては聞くのでした。

「ねぇ、カエルさん。こっちで、あってるの?」

少女が来ていたあかむらさきのワンピースは夜露を吸って益々その色の濃さを増し。
カエルが着ている上等な上着も夜露を弾いてきらきらと輝いていました。


上等な上着を着たカエルは何も言わずにぐんぐんと引っ張っていき。
少女はその手を離す事も出来ずにただ引っ張られています。
やがて、その小さな森は終りを告げるかのように木々が少なくなり、小さくなり。
フクロウの悲しげな声も聞こえなくなりました。
ただホタル茸も姿を消して、木々がすっかり少なくなった頃には、二人は星を頼りにしなくては、ならなくなっていました。

「この辺りは、人攫いが出ないと、いいけれど。僕はカエルだから、見逃されても、君はそうはいかないかも、しれないから」

やっと、小さな森を抜けて、上等な上着を着たカエルは口を開いて、一気にそう言いました。
少女はカエルの言葉を怖がって少し震えました。

「でも、何もなく抜けられてそれでもよかったね」

上等な上着を着たカエルはそれでも笑ったように言いました。
それはカエルの本心で。
少女はそれを聞いて少し安心しました。

「これから、どうしましょう」
少女は上等な上着を着たカエルをみつめて尋ねます。

「そうだな。馬車がくるまで待つか、それとももう少し頑張って歩いてみよう」
暫く考えてから上等な上着を着たカエルは言い、少女の方に向き直ってから、今度は、少女に尋ねます。

「君は、どうしたら、いいと、思う?……僕の意見はさっき言った通りなのだけれど」

さて。
少女は困ってしまいました。
お互いまったく記憶がなくって。
しかも一緒にいるのはカエルです。
お金を持っているかも、わからないのに、どうしたら、いいのでしょう。


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