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風鈴
【エッセイ/詩 恋愛小説】

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風鈴-1

君が僕に手紙を書くのは
これでもう何度目になるだろう


一番最初の手紙では
就職が決まり
いよいよ社会へ出るのだと
人前に出るのが苦手な君は
自分を奮い立たせていた


僕も君もまだ若くて
なにもかもがこれからだった
なにもかもが



あれから数年


もうずいぶんと月日もたったけれど
君はあいかわらず
手紙を書き続ける


新しい出逢い
結婚が決まったこと
そして
新しい命を授かったこと


書いた手紙は
もう、何通目になるか
わからないほど


それでもそこには
戸惑いながらも
君が自分で選び出した答えが
かすかな不安と
それをはるかに上回る
未来への希望とともに
頑なな決意の言葉で
記されていた



そして今も


あの日
若かった僕らが初めて
溢れ出る愛しさを知って
互いの顔に触れ合い
確かめたように


生まれてきた子供にも
優しく撫でて、触れて
その形を
その存在を
確かめながら
たくさん愛していくのだと


書き上げた君は
手紙に封をして
届けられることのないその想いを
小さな箱にしまった




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