風鈴-2
僕にはもう
あの日のように
君に触れることは
出来なくなってしまったけれど
―どうか、君に
どうか、その心の傷口に
いつまでも
優しい風が吹きますように―
「…おかあさん」
「あら、おっきしたの」
昼下がり
眠い目をこすりながら
一人の子供が目を覚ます
「お外に出て、お散歩しようか」
見つめる母親のまなざしは
とてもあたたかく
窓からは
春の空気が通り抜けて
子どもの柔らかな髪を揺らす
窓辺につられた風鈴が
チリンと一つ
静かに鳴った。
『風鈴』終