異界幻想ゼヴ・セトロノシュ-27
闇の中で、目が開いた。
赤に近いような濃いピンクの瞳が、面白そうに瞬く。
「ねえねえ、信じられる?」
「何をだ?」
野太い男の声が、いぶかしげに問い返した。
闇の中に、金色の片目が現れる。
「ミルカが帰って来たのよ。あたしには……同じだもの、あたしには分かる」
「ほう?」
どこか狂的な色を含んだ声と共に、水色の目が開いた。
「信じがたいが……確かなのか?」
「当たり前でしょっ」
ピンクの目が、苛立たしげに狭まった。
「今までにない繋がりが、あたしの中に構築されてる。こんなの、ミルカの帰還以外にありえない……バランフォルシュ様を通じて、ミルカと繋がってるのよ」
金色の目が、すっと細くなる。
「面白いじゃないか……欠けていながらガルヴァージを屠った連中が、ますます強くなるとは」
くひひひ、と狂的な笑い声が響いた。
「カイタティルマートがどうしてあいつを気に入っていたのか、俺には分からんね。特筆するべき所のない、弱い奴だった」
「それを言うならあんたもよ。マイレンクォードがどうしてあんたみたいなガイキチ一歩手前をお気に入りなのか、あたしには理解不能だわ」
ひひひひひ、と不気味な笑い声が響く。
「水に分け隔てはない。マイレンクォードはキワモノがお好きなのさ」
手の平に拳を打ち付ける音がした。
「では、やるべき事は決まったな」
「だな」
「そうね」
野太い声が、指針を告げる。
「我らが宿敵達に、挨拶をしてやろうじゃないか」