幼年編 その二 アルパカの洞窟-6
「まさか、親子?」
「そうなんじゃ……」
苦々しく呟くドルトン親方。彼がこの状況で逃げないのはそれが原因だろう。
もしこの親子が連鎖爆発を起こせば、村にまったく被害が出ないとは言い切れない。
「ねえ何か方法はないの? そうだ。ブーメランでそいつら全員一度に倒せたりしない?」
「無理だよ。せいぜい二、三匹だ……いや、あるぞ……!」
リョカはブーメランを腰のホルダーにしまうと、両手で印を組み始める。
「大地を駆ける精霊よ、今、我は汝の力を欲する時なり……。唸れ真空刃! バギ!」
リョカがロウソクのお化けに向かって両手を向けると、彼が大気中から集めた風の精霊の力が集い、軽やかな轟音と共に空間のひずみが見える。
「ギヒィ!!」
「グヘェ!」
魔物達の悲鳴が上がり、灯火がどんどん消えていく。
「すごいすごい!」
だがそのうちの一匹は物陰に隠れ、彼の真空魔法をやり過ごそうとする。
「ビアンカ、お願い……」
魔法が終ると同時にビアンカもその炎を絶やすべく、フタを持って駆け出す。だが、
「メラ!」
「きゃっ!」
突然の反撃とさらに味方への援護。ビアンカは何とかそいつの炎を消すも、近くに倒れていたろうそくの一体に炎が向かう。
「くっ!」
もう一度唱えるべきか迷うリョカ。だが、霧散した風の精霊を再び集めるには、洞窟という無風に近い場所では困難を極める。
「ヒャド!」
すると女の子の声がした。これまた簡易詠唱の氷結魔法。いくら初等とはいえ、そうそう使いこなすことができるものではない。
リョカは一瞬昨日の女性、アニスを思い出すが、声質からそれが年相応の女の子だとわかる。
「ギョヘィ!」
炎を託されたロウソクだが、それは突然の氷結魔法により潰えた。
洞窟の中は差し込む弱い光のみとなるが、一同、ほっとしていた……。