A-11
放課後。
先ほどの騒動は、なんとか沈静した。が、わだかまりを残したままだった。
「あんな風に思ってたなんて…」
唐突な不安要素。それによって、学級が妙な緊張に包まれた。
「とにかく、なんとかしないと…」
そう思っている時、後ろから気配を感じた。
「せんせえ、何してんだ?」
現れたのは大と公子。教室の掃除当番を終えて、下足場から出てきたのだ。
雛子は、思いをぶつけた。
「大くん。哲也くんの家、知ってる?」
突然の問いかけに、大は躊躇う。
「そりゃ…知ってるけど」
「あのね、そこに案内してくれないかなあ?」
「えっ?」
思いもしなかった頼み。大の心は、激しく動揺する。
「あいつの家、母ちゃん遅いからなあ…」
ごまかそうとする大。そこに、公子が割って入った。
「マサル!あんた、何をグジグジ云ってんだッ」
強い言葉。大は、思わずたじろいだ。
「せんせえは、あんたに連れてってって云ってんだッ!さっさと行け」
「で、でも…」
雛子は二人の掛け合いを見つめるうちに、可笑しくなった。
(男の子のリーダーは大くんみたいだけど、公子ちゃんには敵わないみたいね)
「だったら、わたしが行くよ!」
煮え切らない大に、公子は諦めた。
「わたしだって哲也の家は知ってんだからッ」
ここまで云われたら、引き下がれない。
「わかった!オレが連れてくよッ」
大は、大見得を切った。
ニヤリと笑う公子。
「だったら、最初からそう云えッ。キン〇マ付いてんのか!?」
「うるさいよ、公子はッ。早よ帰れや!」
公子は、それには答えず、雛子の方を見ると、
「せんせえ、また明日」
ペコリと頭を下げて、校門の方へと駆け出した。
「気をつけて帰るのよ!また明日ね」
「はーい!」
弾むような声を残して、公子は帰って行った。
残された大は、ひとくさり悪態をつく。