姫はじめ-4
荒木の右手は、今にも崩れ落ちそうになる井田の胸を支えていたが、急にスッと下に伸ばされたかと思うと、真っ赤に緊張し切った井田の陰茎を固く捕まえた。先端からこぼれ出した透明な汁が、尾を引いて根元まで濡れそぼらせていた。荒木は、右手を強く握り締めたまま、井田のペニスを、思いっきり乱暴にしごきたてた。同時に、左手の動きも速く大振りになってゆく。
「いやあ。や、やめてえ…。」井田が、かすれた叫びを押し出した。すると、荒木は、初めて井田の言うことを聞き、立ちどころにピタリと手を止めた。まさか本当にやめるとは思っていなかった井田も、呆気にとられて凍ったように動きを止めた。腰元では、いきり立った肉の塊がビクビクと脈打っている。絶頂に達する寸前で急に突き落とされ、井田は何を考えているかも判らないまま顔を歪ませ、虚空を見据えていた。
「本当にやめてほしいの?」意地の悪い笑みを湛えて荒木が尋ねる。
(うん。って...うんって言わなきゃ。)
混濁する頭で必死に言葉を絞り出そうとする井田。けれども、気付いた時には、犬の様にだらしなく舌を垂らしながら、首を横に振っていた。荒木はニンマリと頷くと、
「言葉で、どうして欲しいのか言ってくれないとさあ。ほら、どうして欲しいの?」更に追い討ちをかける。頭の中身と、行動が噛み合わない。完全に混乱した井田の口から出た言葉は、
「む、無茶苦茶にしてくだひゃいっ。」というものだった。
「わかりました、お姫様。」また演技的な、しかし興奮を隠し切れない口調でそう言うと、
荒木は、覆い被さるようにして、井田の熱い肉棒を咥え込んだ。ピチャッ。とか、クチュッ。とか言う水音が、断続的に井田の耳に入ってくる。生温かい舌のざらついた感触に、井田は思わずせなを仰け反らせる。そこで目に飛び込んで来たのは、他人をかしずかせ、快感に身をよじる美少女、自らの姿だった。鏡に映る自分の姿に興奮を感じながら、前からは舌に絡め取られ、後ろからは指に突き込まれて、性感が逃げ場なく体の中を渦巻く様だった。どんどん何かが溜まっていって頭の中が白くぼやけていく。そしてまた、井田は、荒木の熱を体で感じながら、その熱の為に下腹部の何かが炎を上げているのを感じるのだった。
井田は、力一杯にその火を押さえつけていたが、やがて、ふっと気を抜いた一瞬に、ブワッと凄まじい豪火となって井田の爪先までも焼いたかと思うと、頭の中のぼうっと白いものが蛇口を捻ったように流れ出す。井田は、白く濁った色の粘液を、ビクビクと波打つペニスの先端から大量に撒き散らしつつ、用具室の冷たい床の上に力なく崩れ落ちた。
ハッ、ハッ、ハァッ、ハッ......
まだ肩で息をしている井田に、舌なめずりをして荒木が声をかけた。
「一杯出たね。もしかして、射精すンの初めてなんじゃない。」
脱力してキョトンとした顔で、井田が答える。
「これが…しゃせい?」
「えっ、ホントに初めてかよ。」驚いたのは荒木の方だった。
「うん。」あいかわらず気の抜けた表情で井田が答える。
(これが…射精。)井田の下腹部では、未だにさっきの火が燻り続けていた。光沢を持った桃色のドレスや、絹のような白い両足には、そこかしこベトベトと精液をかぶっている。