姫はじめ-3
「だ、駄目だよ。」慌てて一層身を捩る井田。
「小学生の時とか、よく見せっこしてたじゃん。」
「そんなの、昔の話だって。今は―、」
「何にも、変わっちゃいないよ。」荒木は右手の指に力をかけると、その小さな布地を一気に引き摺り下ろした。固く突き出した井田のペニスが、反動で上下に大きく振れる。荒木は、雁首のくびれた辺りを人差しと親指で抓むと、柔らかく握りこみ、ゆっくりと包み込むように摩り始めた。
「や、やめてよっ。」井田は両膝をきつく閉じ、縮こまるようにして腰を引く。小刻みな体の震えが、荒木の体にも伝わってくる。しかし、荒木は意に介さぬ様子で、ゆっくり、或いは速く、撫ぜる様に、若しくは握り締める様にして、井田のペニスと、その下にぶら下がる少し小振りな睾丸とを弄び続けた。
「やめてったらあ。」井田が絞り出すような声で言う。
「あまり大きな声を出すと他の者に見つかってしまいますよ、お姫様。」荒木が演技ぶった口調で答える。
自分に起こったあまりの事に動転していた井田は、そこで俄かにハッとした。
(もし、こんな姿他の人に見られたら…。)
そして、目前の鏡に映る今の自分の姿を見つめた。そこに、井田が見たのは、ぐちゃぐちゃにドレスを開けさせ、後ろの男の愛撫に息を荒げているふしだらな少女だった。しかし、その股間からは、確かに男性の物である性器が血管を浮き立たせ、天を指してそそり立っているのだった。しかも、信じ難いことに、その異形の美少女は、他ならぬ自分自身なのである。
(うえっ。)
気味が悪い。けれども、井田は鏡を見続けていた。というより、眼が、鏡に、その中の淫らで妖しい光景に、釘付けになっていたのだ。
ふと、荒木の両手が、井田の体から離された。何やら、後ろでゴソゴソとやっている。解放してくれるのだろうか。期待と不安の入り混じったような面持ちで振り向こうとすると、ヌルッ。何か冷たい物が背中に当たった。
「ひゃっ。」小さく驚きの声を上げて井田が後ろを覗き込むと、それは荒木の左手だった。
何やらぬめりのある液体に覆われている。荒木は、蛍光灯の光にぬらぬらと光沢を放つその左手を、ゆっくりとショーツに差し入れて行く。
「ふぁぁぁ」臀部の割れ目に沿って流れるゾクゾクとした感覚に身を震わせる井田。荒木は上下に手を揺り動かしながら、井田の肛門に粘液を塗りつけていく。
やがて、そのぬめった液体がすっかり馴染んで二人の体温と同じくらいに熱を帯びると、
荒木は、左手の第二指を折り曲げ、つぷと井田のお尻の穴に挿し込んだ。
「き、汚いよ。」井田が震えた声を上げるが、
荒木はそれには答えず、手の平ごと指を回すような動作で、ゆっくりと、けれど確実に、挿し込んだ指を深くしてゆく。
無論のこと、井田の肛門は今まで排便以外の用途に使われたことはない。それが、そしてその中の初心で軟らかな内臓組織が、微かにも考えたことさえないような闖入者によって侵されているのだ。直腸から脊髄を駆け上がって来るような悪寒と快感。井田は不規則な呼吸音を立てながら、唇をぐっと噛み締めていた。荒木はそれでも容赦なく、深く、深く、指を突きこんで行く。井田の消化管が荒木の指をすっぽり飲みこんでしまうと、その侵入者は、纏わりつく花弁のような肉襞を、やたらめったらに舐め回し始めた。井田は、軽い眩暈のようなものを感じながらも、何とか逃れようと腰を振るのだが、それは、井田に更なる苦痛と、それを上まわる恍惚感とを与えるだけだった。膝が笑い出す。下半身に、鈍い痺れじみたものが広がってきつつあった。