姫はじめ-2
「はい、着替えたよ。」井田が乱暴に扉を叩くと、荒木が期待に胸膨らませて飛び込んできた。
「おお、すっごいよく似合ってんじゃん。感動的!」
「何言ってんだよ。」井田は冷ややかな視線を返す。
「ところで、これ、何なの。袋の底に入ってたんだけど。」井田の細い手には、分厚い鉄作りの手錠が握られていた。
「ああ、それはさ、囚われの姫って言ったじゃん。」荒木は、そう言いながら井田の手に錠をはめると、
「ほら、これで完成。」背後の柱に井田を括りつけてしまった。
「ハァ〜〜。」本日三度目の長い溜め息。
「無理してでも学校に来てればよかった。」
「まあ、そう言うなって、本当に似合ってるから。見てみなよ。すごいかわいいから。」
そう言いながら荒木は、古びたキャスター付きの大鏡を引っ張り出してきた。
鏡を覗きこむ井田の視線が一瞬静止する。
空白の瞬間....
「かわいい...。」井田は思わず声を漏らした。そこにいたのは、自分ではなく、露出の多いドレスを着た、挑発的な美少女だった。
「なっ、かわいいだろ。」
鏡に映った自分の姿、というか女の子の姿にすっかり見惚れている井田に、後ろから荒木が声をかける。と、急にニヤニヤとした笑みを浮かべ、
「そして、美しい囚われの姫には―、」言い終わらぬうちに腕を振り伸ばして、
「禁断の恋がつきものだろ。」いきなり井田の胸を抱き竦めた。
「わあっ」井田は急に我に帰らされて、
「何してるの。離してよ気持ち悪い!」上ずった声で言い放った。
「でも、お姫様。お顔が真っ赤ですよ?」荒木は意に介さぬ様子で薄い胸を揉みしだく。
「こ、これは風邪のせいだって!!。」荒木の手を振り解こうと奇妙に体をくねらせながら、井田が叫んだ。
「ふぅ〜ん。」荒木は、してやったりと言わんばかりの声で答えた。
「それじゃ、コレも風邪のせいなんだ。」
そして、右手を下に滑らすと、足の付け根の辺り、いつの間にかドレスには有り得べくもない膨らみを形作っている場所に手の平を押し付けた。
「ぁう。」井田の脳髄に甘い衝撃が走る。
荒木は、しばらくそのまま右手を這わせていたが、やがてその手をぴたと止めると、ドレスの裾をつまみ、スゥーッと引き上げ始めた。ピンク色のサテンのドレスが舞台の緞帳のように滑り上がると、白磁色の細い腿が、そして可愛らしいレースの下着が覗いた。その真ん中の痛々しいほどの脹らみからは、純白にほんのりと紅色が透けている。荒木は、そのまま下着にも手を掛けた。