投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「カオル」
【その他 その他小説】

「カオル」の最初へ 「カオル」 6 「カオル」 8 「カオル」の最後へ

カオルA-2

 真由美が弟の“想い”を知ったのは4年前。彼女が11歳、薫が8歳の時だ。

 小さい頃から大人しく、外で遊び回るよりも、自分と一緒にぬいぐるみやお人形に興味を持つ弟を、特別変だとは思わなかった。

 それが決定的になったのは、真由美がお友達の誕生会にお呼ばれした時だった。

 部屋で着替える真由美を、薫はジッと見つめていた。
 まだ、今のように別々の部屋でなく、姉弟2人、ひとつの部屋で過ごしていた。
 そんな姉に、薫はひとつの疑問をぶつけた。

「ねえ、お姉ちゃん」
「なあに?」
「お姉ちゃんは、どうしてスカート履けるのにボクはダメなの?」
「ええっ!?」

 訳のわからぬ質問に、真由美は思わず奇声をあげた。

「当たり前でしょう!スカートは女の子が履くモノで、薫は男の子だもん」
「ちえっ!お姉ちゃんはいいなあ」

 そんな弟を、真由美はマジマジと見つめると、

「ち、ちょっとッ」

 薫の前にしゃがみ込み、不安な顔で訊いた。

「スカート履くの羨ましいって、いつから思ったの?」

 真面目な顔の姉に、薫は俯き加減で答える。

「この頃…お姉ちゃんのお洋服見てたら、いいなあって思って」

 拗ねた顔の弟を見て、真由美はふと、可哀想に思った。

「じゃあさ、いっぺん履いてみる?」
「いいのッ!?」

 真由美にすれば、ほんの気まぐれだった。が、薫は、破顔させて喜んでいる。

「小さくなったのが有るからさ。ほらっ」

 真由美が洋服タンスから、ピンクのスカートを取り出した。

「うん!」

 薫は躊躇なくスカートを受け取ると、履いていた半ズボンを脱いだ。
 喜び溢れる顔で着替える弟に、真由美は何とも云えない気持ちになった。

(そっか。薫は、女の子になりたいのか…)

 無理も無いという思い。自分よりも女の子らしい顔の薫が、女の子の洋服を着たがるのは。

(そうだ!)

 真由美の中で“ある考え”が浮かんだ。

「薫。ちょっと待っててね」

 そう云って慌ただしく部屋を出ると、数分で戻って来た。

「これ…塗ってあげようか?」

 手には、母親の口紅が握られていた。

「綺麗…」

 細い腰を覆ったピンクのスカート。そして、濃い紅をひいた口唇。形容しがたい妖美さに、真由美の方が赤くなった。


「カオル」の最初へ 「カオル」 6 「カオル」 8 「カオル」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前