to Heart〜I LOVE YOU-3
「……もしもし。」
『……オレ。仕事、終わったか?』
「うん…。今帰るとこ……!!?」
電話しながら、外に出た私の目に飛び込んできたのは、会社前に路駐したケンボーの車と、携帯片手のケンボーの姿だった。
「……なんでぇ?」
突然の目の前の光景に、思考回路が停止してしまって、それしか言えない。
「いいから、乗れ!」
そう言ってケンボーは、さっさと運転席に乗り込んだ。
よくわからないまま、助手席に乗ったものの、気まずくてケンボーの顔が見れない。
「……今日、時間あるか?」
車を走らせながら、ケンボーがこちらを見ないで聞く。
「…うん。」
小さく頷いて、横目でケンボーを見た。
不機嫌そーな冷たい表情。……やっぱりまだ怒ってる。
……どこ行くんだろう?だまったまんま、かなり走った。高速飛ばしてずいぶん遠くまで来た。
運転するケンボーの横顔をチラッと見る。
胸が苦しい。嫌われても、やっぱり好き……。
どうしようもないくらい、好き。
高速をおりて、一般道を走る。赤信号で車を停める。
あやまらなきゃ……。昨日あんな風に帰ったこと……。
「ごめんっ!」「ごめんなさい!」
……あれ?私とケンボーのごめんが一緒だった。
二人で顔を見合わせる。
「…なんでお前があやまるんだよ?」
青信号になって、ケンボーは前を向いて車を発進させる。
「…だって。昨日、あんな帰り方しちゃったから……。」
みんな心配して集まってくれたのに、なんて自分勝手な行動しちゃったんだろう……。
俯く私に、ケンボーが言った。
「ごめん。ヒドイこと言って…。言いすぎた。」
「ううん。ケンボーの言うとおりだった。私、心のどこかで、総務の仕事をバカにしてた気がする。やってもいないうちから、わがまま言って……子供みたいだよね。言ってくれてありがと。」
ケンボーは少し考えてから、ゆっくり話始めた。
「……昨日言ったこと、ちょっとやつあたりも入ってたんだ。俺、理系の学校出てるのに、やりたい仕事やれてないし……。つい、キツイ言い方しちまった…。だから、俺が悪かった。ごめんっ!」
「ううん…。あたしの方こそ、ごめん。……じゃ、おあいこってことにしよ♪」
めったにない重苦しい空気に耐えかねて、明るく言ってみた。
「……ははは。今日一日、どんな顔して謝ろうか、ずっと考えてたのに、おあいこかよ?……まったく。お前らしいや。」
ケンボーが呆れたように笑ってる。
………よかった。嫌われてない……のかな?
ホッと胸を撫で下ろす。