やっぱすっきゃねん!VN-8
「確かに…葛城さんや藤野さんにはバカにされるかもしれません。でも、何とかしたいんです。
何としても、ウチが勝つ確率を上げたいんですよ」
その目には、強い意志が感じられた。
「…具体的に、どういう采配を?」
問いかけに、永井はひとつ頷く。
「明日の試合はなんとかなると思います。問題は中1日を置いた準々決勝です。
これまで7イニング制だった試合が9イニングになる。それだけ、先発ピッチャーへの負担が増えるんです」
中体連の定めた規約を、苦々しげに口きする永井。
「これまで、5回まで任せていたのが、7回は投げなきゃ厳しい。
もし、仮に決勝まで進めたとすると、残り3試合を2人の先発に、負担を負わせるなきゃなりません。
だったら準々決勝までは、十分な休みを取らせてやりたいんです」
勝利への執念──チームが勝つためなら、わずかな可能性にも賭けたい。そんな永井の気概は、葛城も十分理解できた。が、その思いが無謀な賭けにも思われた。
「でも、どうされるんです?明日の先発投手は」
確信をついた問いかけ。対して永井は、“自らの考え”をとつとつと語った。
「えっ…?」
葛城は我が耳を疑った。
「それッ!本気で云ってるんですか!?」
彼女は思わず、身を乗り出す。だが、永井には想定された事だったのだろう。
「…もちろん本気です」
先ほどと変わらぬ姿勢で、言葉を続けた。
「これは、県大会が始まる前から考えてたのですが……」
こう前置きして、自分の考えの一部始終を葛城に語りだした。
最初は、疑心暗鬼という表情で聞いていた葛城だったが、ディテールが明らかになるにつれて、徐々に目を輝やかせた。
「……わたしの考えは以上です」
永井が静かに言葉を結んだ。
すると、一拍間を置いて、
「面白い作戦です!」
葛城が、再び声を響かせる。しかも今度は、ワクワクとした、期待感を抱かせて。
思わず、身を乗り出す永井。
「そう、思われますか!?」
「もちろんッ!」
葛城は、うんうんと何度も強く頷いた。
「確かにリスクは有りますが、上手くいけば、ウチのディフェンスがより力強いモノになるハズです」
「そう思って頂けるとありがたい…」
永井の顔に、再び力がみなぎってきた。