嘘みたいな I LOVE YOU-4
「わりぃ!遅れた!」
「藤木!おせぇーぞ!」
「やーっと来た!」
ほら、やっぱりこいつらはブーブー言うんだよ…。
走ってきたから喉カラカラだ。千優希のカシスオレンジをもらって(奪って?)一気飲みする。
しょうがないなぁ…って顔をしながら、千優希が俺の分の生ビールを注文してくれた。
20代前半の頃は、もっぱら恋愛の話が多かったが、最近はお互いの仕事の話が多い……みんなおやじになってきたんだろーか?
千優希が席を立ってから、しばらくたつなぁ……。あいつ酒弱いからなぁ…。
「片瀬!千優希の様子見てこいよ。」
心配だが、俺が行くわけいかないから、片瀬に頼む。
「はいはーい。ナイトだねぇ。心配ならついてけばいいのにぃ。」
意味ありげに悪魔の微笑みを浮かべ、片瀬が席を立つ。
「藤木さぁ、言っちゃえば?北川に。好きなんだろ?」
……やっぱりこいつらも気付いてたのか。俺の態度ってそんなにわかりやすいのか?
「そー簡単に言えるわけないだろ。」
「やっぱ好きなんだぁ。10年親友ってゆー厚い壁に阻まれちゃってんの?壊しちゃえば?そんなん。」
柊が無責任に俺の肩を叩く。そー簡単に壊せれば苦労はしない。
俺のオフサイドでこの関係が終わるなんてまっぴらだ。
「北川、そーゆーのニブいからなぁ…。言わなきゃ一生そのままじゃねーの?おまえら。」
「まぁ、千優希ちゃんの態度見てると、微妙っていえば微妙だよなぁ。だれにでも優しいからなぁ。」
―――そうなんだ。千優希は誰にでも優しい。男でも女でもわけ隔てなく…。
みんなでお茶してたりしても、千優希は自分のケーキを『あ〜ん』って食べさせてくれたりする。そんだけのことでも俺の心臓は止まりそうなほどドキドキするのに、次の瞬間、柊や片瀬にも食べさせてる……。
優しいから期待しちまう分、オレだけにじゃないってわかった時がすっごいヘコむ…。
「ただいま。」
千優希が片瀬と二人で帰ってきた。気まずくて顔が見れない。
「藤木は彼女作んないの?」
安部ちゃんがいじわる悪魔の顔で、千優希の前でその話題をふってきやがった…。
千優希がいるトコで何言わせる気だっ!?
「仕事が恋人だよ!」
必死で取り繕う。
「ケンボーは場の空気が読めないから、第一印象がよくてもその後、急降下するタイプだよね」
千優希が笑顔でさらっとけなしてくれる……ヘコむなぁ。
デコピンして応戦はするものの、千優希からみると、やっぱその程度なのか…オレって。やりきれない気持ちをグイッとビールで流し込む。