嘘みたいな I LOVE YOU-2
千優希がトイレで席を立つ。千優希が見えなくなったのを確認してから、芹香ちゃんが小声でとんでもないことを言いだした。
「ケンボーさん、千優希のこと好きなんでしょ。告らないの?」
ブハッ!思いもよらない質問に、俺は飲んでいたビールを吹き出した。
「な、なんでそれを…。」
やべっ。動揺しすぎだ!俺!
「見てればわかるよ〜。わかんないのは千優希くらいじゃない?あの子激ニブだからね〜…。大学ん時も、千優希のこと好きでそれとなくアピールしてた男の子が何人もいたけど、あの子全然気付かなかったもん。」
芹香ちゃんは俺の動揺ぶりにも気に留めず、ビールを飲み干す。
「ちゃんと言わなきゃ気付かないよ?あの子。いつまで親友やってんの〜?男でしょ?バシッと決めなさいよ。」
う゛っ!!キツいお言葉…。だけど……。
「………なんか自信持てなくてさ。理系の学校出たのに、それ系の仕事してね〜し…。アイツは企画から昇進して総務にって言われたのを蹴ってまで、自分のやりたいことやってるってゆーのに…。俺は何やってんのかなぁってさ。」
なんか後ろめたいよーな、なさけないよーな、そんな気がして。これで告白して、ダメでアイツが離れていっちまったら……そう思うと恐いんだ。
「ちょっとぉ…。プロポーズするわけじゃないんだからさぁ…。」
芹香ちゃんが呆れてる。
でもそんぐらいの意気込みがないと、壊せないくらい高いんだぜ。親友の壁って…。
「トイレ行く手前にすっごいかわいい熱帯魚がいたよ〜♪」
千優希がなにも知らず呑気に帰ってきた。
「ま、がんばんなさいな。」
芹香ちゃんが、俺に向かって軽く言う。
「なんの話?」
「仕事のアドバイスしてあげてたの。」
千優希はふ〜ん、とカシスオレンジを飲む。
サラサラのストレートロングにぱっちりした瞳、童顔で頼りなげな容姿のくせに、YES.NOをはっきり言える芯の強さを持ってる。
何事も一生懸命で友達思い。
千優希は先輩からも後輩からも人気があるって前に片瀬が言ってたっけ。
最近仕事が楽しいって言ってるから、安心してたけど……好きなヤツがいたっておかしくないよなぁ。