ピリオド 終編-26
「そう云えば…」
そんな時、ふと、頭の中に夢の場面が浮かんだ。
「先日、小さい頃の夢を見たと云ったよね」
「…ああ、それで?」
普段なら云えないことも、酒がオレを後押しする。
「あの子供の頃の思い出…あれがすべての原点なんだ」
「原点って?」
「オレが姉さんを好きになったってことさ」
初めて、想いを言葉にして告げた。
「な、なに酔った勢いで云ってんのよ!」
受け取める亜紀の方は半信半疑の様子。オレは、構わず話し続ける。
「毎日々、姉さんはオレに力を与えてくれたんだ。
そして思った。あの日から今まで、オレは姉さんだけを見つめていたんだと」
「和哉…」
「こんなこと云っても、姉さんが受けた傷は癒えないだろうけど、オレはただ…性欲だけで亜紀を欲したんじゃない」
ついに云ってしまった。
だが、待っていても、なんの返事もなかった。
伏せた目で、何かを考えてるようだ。
「…和哉」
ようやく口を開いたのは、かなり経ってからだった。
「松山のお祖父さんの13回忌って云ったわよね?」
いきなり、場違いとも思える話を繰り出す。
「…それが?」
「アンタは忘れてるみたいだけど、亡くなった日のこと覚えてる?」
「13年前って…!」
オレの変貌に、亜紀は小さく頷いた。
「あの嵐の日、わたし逹は姉弟から男と女になったの」
祖父の危篤により、親父もお袋も家を留守にした。
その日の嵐に、亜紀がオレの部屋に入ってきた。
そこで一線を越えた。
「そうだったな…」
苦笑いを浮かべたオレの傍らに、亜紀が寝そべった。
「何をしてんだよ?」
「あの日みたいにさ、一緒に寝ようよ」
また悪ふざけか。
「ここで寝るってことは、どうなるか分かってんだろうね?」
オレもふざけて、“あの日”に云った台詞を吐いてみた。
すると、
「いいわよ」
真っ直ぐに見返してきた。
「すべては、ここから始まった…」
この瞬間、オレの心臓が強く脈打った。